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【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第7章- 秩序

 

本連載記事は旧コンテンツです。

新バージョンを下記にて連載予定です。

amboxambo.hatenablog.com

 

これの続き 

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

5種類の攻め方

  

⑤ルーズスタイル

 

最後に紹介するのは、【ルーズスタイル】と呼ばれる作戦です。 

 

セットアップばかりしていると、いつかは必ず対策されてしまいます。

  • サイトにスカイスモークが来た瞬間にバリアオーブを張られ、スカイスモークが晴れるまでの時間を稼がれる
  • スパイク設置地点にインセンディアリーペイント弾ショックダーツ等を炸裂させ、確実にダメージを蓄積させる
  • スタンダードの後、攻撃側のアクションが消えて静かになったら、セットアップの準備をしているということなので、オウルドローンや物理的なプッシュでどこか前目をクリアリングする

など、いくつも対策例を挙げることができます。

 

これの対策として攻めのテンポを変化させることが重要なのですが、その最たる戦術としてルーズスタイルが用いられるのです。

  

 

Xizt氏(2020)はルーズスタイルに対する持論を以下のように展開しています。

I encourage freedom.(中略)Obviously if you have a more loose playstyle you're going to be more unpredictable, and that's a big advantage.(中略)freedom should always exist in your matches. The amount you need is entirely up to you*1

クソ翻訳:私は自由を推奨します。(中略)ルーズスタイルを持っていると、あなたは敵から動きを予測されなくなり、それは明らかに大きな利点になります。(中略)自由なプレイは、常に試合中に存在するべきです。必要な量はあなた次第です。

 

また、Lekr0氏(2018)はルーズスタイルを行うタイミングについて以下のように説明しています。

We play a lot of loose-style standards(中略)But when the communication isn't up and we aren't playing confidently, we usually go towards most of a strategic approach then. When we win a few rounds, we can go back to the loose style*2

クソ翻訳:私たちはルーズスタイルを多く行います(中略)が、情報が上手く取れず自信を持ってプレイできない場合はセットアップを行うことがあります。その後、数ラウンド勝利すると、再びルーズスタイルを行います。

 

戦術よりも自由を重んじるCSGOのチーム、FaZe Clan の NiKo氏(2018)は、大会を欠席してまで戦術を練習していたとされる Astralis というチームに対して、以下のように挑発しています。

We are playing with more freedom so we don't practice the tactics so much and stuff like that.*3

クソ翻訳:私たちは自由にプレイするため、そのように戦術を練習したりはあまりしません。 

  

 

このように、ルーズスタイルはれっきとした戦術の1つであり、組織的なセットアップの前後に行うことが良好とされています。

 

 

しかし、これはCSGO出身者でもよくある間違いなのですが、「ルーズスタイル」「自由」という名称から、ルーズスタイル=チームプレイから解き放たれた作戦という解釈をする人がいるのですが、これは大きな誤りです。

 

FalleN氏(2016)はルーズスタイルで留意すべき点として、以下のように指摘しています。

One thing that normally people do mistakes about playing like this: your players can't often try to get kills at the same time. Alright so that's a common mistake. Because when you set your team to do a free style or a loose style, what happens is every single player tries to go too fast and they try to bring a kill to the table at the same time in the beginning of the round. And that's not exactly the right approach to have to the game.(中略)So being patient and calm is very important to make this style work. And remember you are kinda holding. You are just waiting for mistakes and if anything. If you don't make anything happen, in the end you guys can get together and do an execute and change to another strat later. Alright so if you don't kill someone it's fine as long as you don't die as well. So you as a player need to figure out how to try to get kills without dying everytime because if you die too much then it's a bad strat for you. you are making it easier for the CTs alright. so that style requires a lot of experience.*4

超長いですが、とても重要なこと言ってるので、全部目を通してください。

 

クソ翻訳:人々が犯す間違いのひとつに、同じタイミングで複数の場所でキルを狙ってはいけないことが挙げられます。これはよくある間違いです。ルーズスタイルを行う際、全てのプレイヤーがラウンドの開始直後すぐにキルを狙おうとします。これは正しいアプローチではありません。(中略)ルーズスタイルを機能させるためには、忍耐強く待ち続けることが非常に重要です。あなたは敵のミスを待っていることを自覚すべきです。もしルーズスタイルで何も起きなくても、起こさなくても、最終的には全員でセットアップなり何なり実行するはずです。つまり、あなたが死なない限り何も問題はないのです。死なずにキルを狙える方法があればより良いです。なぜなら、多く死ぬ機会のある作戦はチームにとって悪影響を与えるからです。さらに、あなたが多く死ぬことで、防衛側を楽にさせてしまいます。そのため、ルーズスタイルは多くの経験が必要です。

 

また、えびまよ氏(2019)も同様に、以下のように複数の場所で同時に戦闘してはいけないことを主張しています。

勝負してキルを狙いに行くとき、それは二つ以上同時に起こすべきじゃない
誰かが○○を取りにいってて、誰かが△△を取りに行っている。同時進行そのものは悪くないが、キルをしなければ取れないポジションなら同時に攻めないほうがいい。  
理由:もし誰かが負けたら、片方が取れたとしてもポジションの維持ができない。*5

 

つまり、ルーズスタイルの正しい解釈は、自由に動いていいのはごく限られた一部だけであり、他は死なないようにするか、自由に動いてる人のカバーをしたり、敵の配置に穴が生まれる瞬間を根気よく待つ戦術のことなのです。

 

この作戦を一言で表すなら「秩序」が相応しい思います。

 

 

作戦としてのルーズスタイル 

 

例 

eGG esports challenge G-Tune VALORANT INVITATIONAL Absolute JUPITER vs. FAV gaming [ASCENT]

11ラウンド目

6章でも述べた例です。

Bフェイクを仕掛けることでA側のミスを誘発させ、人数差を更に広げることができました。

 

 

VALORANT Champions Tour 2021: Korea Stage 1 Challengers 1 BearClaw Gaming vs. Vision Strikers [SPLIT]

10ラウンド目

初手にジェットがファストのAランプ確保を行います。

その間、他のチームメイトはAメイン・ミッド・Bサイトのいずれかで敵がミスを犯さないか、エリアを監視しています。

 

加えて、本命B攻め時ではジェットがミス待ち役としてAランプでキルを狙いつつエリアのホールドを行います。

 

 

 

RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [ASCENT]

6ラウンド目

レイナが先陣を切ってBをどんどん攻めています。

この敢えてアビリティを使わない淡白なピークを【Peeky Style】*6【ドライピーク】などと呼びます。

れっきとしたタイミングをズラす戦術です。

 

B側で立て続けにキルを取っている際、A側の2人は敵がミスを犯さないか、じっとキルチャンスを伺っています。

 

  

CSGOの例 

マップコントロール → ルーズスタイル

ESL Pro League Season 11 Fnatic vs. mousesports [Mirage]

19ラウンド目

初手に Brollan と KRIMZ という選手がミッドの奥深くまで取り、じっとホールドします。

その後、B側で JW という選手がドライピークで2キルをもぎ取りますが、他の選手はA側で敵がミス(配置転換、プッシュなど)を起こさないか、じっと忍耐強く待ち続けています。

  

 

A攻め → ルーズスタイル

ESL Pro League Odense Finals 2018 Team Liquid vs. Astralis [Inferno]

11ラウンド目

Aに対してユーティリティを大量に使った後ホールドすることで、敵 dupreeh という選手のピークを誘発させて1キルを奪い取ります。

その後、スモークを使われて膠着状態が続いたことで、再びルーズスタイルに移行します。

全ての選手がホールドと敵のミス誘発行為を巧みに組み合わせることで、爆弾を設置 or サイトを制圧することなくラウンドを勝利に導きました。

 

 

A攻め失敗 → B攻め失敗 → ルーズスタイル

ESL Pro League Season 9 G2 Esports vs. Team Liquid [Inferno]

31ラウンド目

A攻めを仕掛けるも、敵が「アパート配置」と呼ばれるイレギュラーな作戦だったため、すぐB攻めへ切り返します。

しかし、その切り返しに対しても迅速に対策されてしまい、3対5の圧倒的人数差シチュエーションまで成り下がったことでルーズスタイルに移行します。

その後、nitr0 という選手がA守り3人のミスを誘発させ、結果、2対2の人数差同等シチュエーションでAを制圧することに成功し、ラウンドを勝利に導きます。

 

 

B攻め失敗 → ルーズスタイル

ESL Pro League Odense Finals 2018 MIBR vs. Team Liquid [Overpass]

21ラウンド目

B攻めを決行するも、敵の数多くのユーティリティによって侵攻を止められたため、ルーズスタイルに移行します。

その後、スモークが晴れるまでの20秒程度じっとホールドすることによって、tarik、FalleN の2人に対するキルチャンスを生み出しました。

そして、高台にいた Stewie2k のスナイパーライフルによって爆弾が落ちてしまった後は、残り時間30秒まるまる使ってサイトの制圧を図ります。

 

 

Bラッシュ → ルーズスタイル

StarLadder Major 2019 Astralis vs Team Liquid [Overpass]

12ラウンド目

おそらくCSGO史上、最も有名なルーズスタイル戦術の1つです。

Bラッシュを仕掛け、強制的に2対2状況まで持ち込んでルーズスタイルを展開します。

 

 

このように、敵の意表を突くことのできるルーズスタイルは、極めればローリスクでハイリターンの結果を生み出すことができます。

しかし、その分経験とゲーム理解度を必要とするので、非常に難易度が高いです。

 

 

ところで、この「ミス」と呼ばれる防衛側のデスの正体ですが、それは【消極的エリア確保】です。 

 

(詳細は別章↓にて後述)

amboxambo.hatenablog.com

  

amboxambo.hatenablog.com

 

攻撃側がファスト、キル、エリア確保などの強いアクションを起こすと、防衛側はアドバンテージを得るためにエリア確保アグレッション(後述)を行うことがあります。

 

もし攻撃側がルーズスタイル配置を行なっていれば、情報を得ようとプッシュしてきた防衛側を狩るチャンスが生まれるのです。

 

ルーズスタイルの本質は以上の部分です。

ルーズスタイルを刺された防衛側は、待ち構えていたラーカーにしばかれたことがトラウマになり、今後は容易にエリア確保を行えなくなるのです。

すると攻撃側は初手にエリアを取り放題、やりたい放題することができ、どんどん攻撃側にアドバンテージが高まっていきます。

 

勘違いされやすいですが、あくまで火力やフィジカルゴリ押しのドライピークが強いのではなく、アクションによって防衛側の配置転換やエリア確保を誘発させる行為(=防衛側の勝ち筋を潰す行為)が最強なのです。

 

 

 

ちなみに豆知識

ルーズスタイルやエリア確保を行なっても防衛側がミスを犯したり目立った配置転換をしなくなった場合

→敵はエリア確保を行なって攻撃側の本命を確定させるような動きを行わないため、スタンダード配置と呼ばれるローリスク・ローリターンの配置を取っていることが多いです。

例:A2 - ミッド1 - B2など

 

ゆえに、サイト中や後ろ目で守っているため、それ以上ルーズスタイルを続ける必要はなく、マップコントロールからの挟み戦術やセットアップを行えばマクロ的には大勝できます。

 

 

ただし、この基本事項を理解しているトップ層においては、メタの裏をかいた読み合いが発生することもあります。

 

CSGOの例

DreamHack Masters Spring 2020 Fnatic vs .FaZe

20ラウンド目 

初手、攻撃側の JW は「Aロング」と呼ばれるエリアを防衛側が確保したことを視認します。

そして Brollan が「Aショート」を無犠牲で確保することができたため、防衛側がAサイトやAロング側で引いて守っている情報を把握します。

その後、BフェイクAを行い、防衛側がAサイトを外しただろうと睨んだタイミングでA攻めを行いますが、実際はAサイト中の殲滅配置で返り討ちにされてしまいました。

 

更なる詳細↓

amboxambo.hatenablog.com

 

 

攻撃側まとめ

 

5種類の戦術の話が思った以上に長くなってしまったため、ここでまとめ

 

  • 勝利に大きく繋がる【勝ち確設置】を最終目標に掲げよう。
  • 防衛側の穴を読み取るために、スタンダードで情報を得よう。
  • サイトを取る手法として、セットアップ、ファスト、フェイク、ルーズスタイルの4種類の攻め方があることを知っておこう。

 

初めの話はもう覚えてないかもしれませんが、最終目標は【勝ち確設置】です。

 

スタンダードやルーズスタイルでキルや情報を得て、更なるキルや【勝ち確設置】をしやすい状況を作るためにマップコントロールを行い、得たエリアや情報を元にリーダーがラウンドを終わらせる方法をコールするのです。

 

 

つまり、これまで7章に渡って述べてきた戦術は全て

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この状況を作り上げるための壮大な戦略の1つという点を忘れないようにしましょう。

 

 

次 防衛側のアプローチ

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

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