【BLAST Pro Series 2019】Astralis は何故 Liquid に勝てたのか -第1章-【Inferno】
はじめに
続き↓
導入
アンボと申します。
BLAST Pro Series: Global Final 2019 は、Astralis の優勝で幕を閉じました。
その中でも最も注目されていた試合は、HLTV 世界ランク1位の Astralis vs 3位の Team Liquid でしょう。
しかも、その対戦カードは準々決勝、決勝の2度行われ、どちらも Astralis が2-0で Liquid を下したことも話題を呼ぶ要因となりました。
この結果を踏まえて、私は「Liquid はなぜ Astralis に勝てないのか」 @csgolove のように無差別全方位に質問しまくりました。
結果、フレンド1人(元気くん)、Team DWFN の Marmelo さん、Ignis の Hornet さんから回答頂きました。
いい質問だね!それがわかっちゃったら間違いなくメジャーのプレイオフまで行けるだろうね!多分ですけど鍵はNAとEUのプロシーンのあり方の違いにあると思います #Peing #質問箱 https://t.co/GrwE719IvV
— Marmelo (@MarmeloCS) 2019年12月19日
相性がデカそう 多分 #Peing #質問箱 https://t.co/QzSfiqkQpM
— Hornet (@hornet_csgo) 2020年1月7日
プロの方が、こんな誰から送られたか分からぬ御託に回答頂き、誠にありがとうございます。
しかし、フレンド含めてあまりにも回答率の低さに落胆し、日本人は揃いに揃って Astralis vs Liquid に興味がなかったのか懐疑心を抱くようになりました。
そもそも試合見てました?
これは Marmelo さんの回答を否定しちゃうことになるんですが、考察することくらいは誰でもできます。
R6Sのプロプレイヤー・コーチの amenbo さんの言葉にもあるように、
マグネットという強くてカッコイイプレイヤーがそういったからと言って、すべてを鵜呑みにしていては、お前はマグネットを超えることなど出来はしない。強い人の動画を見て、真似をしているだけのプレイヤーは永久にそのラインを超えはしないのだ。
トッププロだからといって、無条件で思考や行動の意図を考察しないのは、自身の向上を大きく妨げます。
そこで今回は、みんなにもっとCSの面白みを理解して欲しく、自分の目線から
Astralis は何故 Team Liquid に勝てるのか
を考察していきたいと思います。
追記
これと似たような考察をします。
Here is @TeamLiquid with a cool idea vs @astralisgg on de_inferno #Skybox oh yeah, and also what the new version looks like, with @OnFireAnders pic.twitter.com/MuR64MNWme
— Skybox (@skybox) 2020年1月24日
NAF HAS NO MERCY!!!
とかはないです。
むしろ gla1ve や NAF がやらかしてるのに対して苦笑します。
そういう記事です。
わかる。
準決勝
決勝
※同じラウンド、同じ場面を何度も載せる場合がありますが、私が注目してほしいポイントを指定するので、毎度飛ばさずに見てください。
何度も同じ場面を見ることで、理解がより深まります。
この記事の理解を深めるために、まずはこの2試合を一通り視聴することをお勧めします。
2万9000字
読破所要時間 58分
動画を合わせると、目安:1時間30分。
チーム解説
今大会の Inferno における役割
Astralis
IGL:gla1ve
TR
Entry Fragger:dev1ce
Supporter:gla1ve、Xyp9x
Lurker:dupreeh、gla1ve、dev1ce (A)、dev1ce>Magisk (B)
AWPer:dev1ce
gla1ve ってエントリーのイメージだったのですが、厳密には違ったんですね。
1stキルを取るのはほとんど dev1ce だったので、これも驚きました。
ちなみに、AWP が使われたのは1ラウンドのみで、それも最前線でエントリーを取るために使われていました。
CT
Aメイン:Magisk
A→B:dupreeh、dev1ce
B→A:gla1ve
Bメイン:Xyp9x
AWPer:dev1ce>gla1ve>dupreeh
Magisk の砂場守りは有名ですね。
Liquid
IGL:nitr0
TR
Entry Fragger:Twistzz(A)、Stewie2K (B)
Supporter:nitr0>EliGE、NAF
Lurker:Twistzz (A)、Stewie2K>EliGE (B)
AWPer:NAF
Liquid は AWPer がマップによって変わることで有名ですが、 Inferno においては NAF が AWP を使っていました。
また、1ラウンドだけ Stewie2K がエントリーで AWP を使っていたこともありました。
CT
Aメイン:Twistzz
A→B:nitr0、EliGE
B→A:Stewie2K
Bメイン:NAF
AWPer:nitr0>Stewie2K>NAF
Magisk と同様に、Twistzz のA守りも有名ですね。
チームスタイル
Astralis とは
敵の行動を掌握するチーム
TR
根本的な考え:状況に合わせて作戦を臨機応変に変える。
根拠:爆弾は隊列真ん中が持っているため。
→後ろの詰め待ちやラークがいる。
→本命に攻める時も、もう一方のサイトへ切り返す選択肢を残している。
つまりこういうこと。
切り返しの具体例
準決勝17ラウンド目
Bセットフェイク
→Aにローテーション
準決勝18ラウンド目
本命A
→gla1ve「A4じゃん。B行こ」
決勝20ラウンド目
Bセットでスタックか確認 本命A
→サイト取れちゃったから、本命Bに変更
ラークの具体例
準決勝19ラウンド目
(画面には映ってないが、0:30の dupreeh のキルのこと)
0:45、dupreeh がALの良いポジションを取れた
→gla1ve「Bで爆弾見せるから、dupreeh はラークして敵のローテ狩ってくれ」
準決勝23ラウンド目
B守りの Stewie2K が削れた後、gla1ve がラークのB挟み
→gla1ve「誰もBにローテしないわ。じゃあ既に2B? A行こっか」
→A挟みに移行
決勝18ラウンド目
Bセット
→device がラークでB挟み
また、最適な作戦を立案するために、情報を取るためのラークを起こすことがあります。
Intel Extreme Masters XIII - Chicago vs Fnatic 18ラウンド目
本命A。
この時、device はA攻めに加担せず、Aに爆弾を見せた後のBの状況を確認している。
Intel Extreme Masters XIII - Chicago vs Fnatic 27ラウンド目
device のラーク+情報取りで、B切り返しの可能性を残している。
本命はおそらくAだが、ラストの KRIMZ の位置が不明なので、事故を防ぐため Bへ瞬時にローテできる可能性を device が残している。
StarLadder Berlin Major 2019 vs Liquid in Vertigo
戦術が確立されてなかった最初期の試合。
dupreeh がわざと爆弾を貼らないことで、
・後ろはどのタイミングでプッシュしてくるのか見ている。
・Liquid のAセットに対するカウンターはどういった作戦か見ている。
詳細
TRまとめ
Astralis は様々な可能性を考慮した柔軟なプレイイングを行う。
CT
根本的な考え:相手の作戦を遂行される前に潰す。
根拠:相手のセットプレイを潰す動き(メタの破壊)はあまりにも有名でしょう。
Esports Championship Series Season 8 - Finals vs Evil Geniuses in Nuke
外セットの破壊です。
モロトフ1〜2つで敵のスモークを3つ無駄にできます。
敵の作戦遂行を許さない Astralis ならではの作戦と言えるでしょう。
FACEIT Major: London 2018 vs FaZe Clan in Mirage
Intel Extreme Masters XIII - Katowice Major 2019 vs Renegades in Mirage
ミッドコントロールの破壊です。
Mirage のテロリストにおいて、スモークの無駄遣い・抱え落ちは一番避けるべき状況なので、ヤシを燃やされても消火することはできず、待っていると自分たちが投げたスモークが晴れてしまい、かと言ってヤシを無理やり取り返そうとすると大損害を被ります。
まさに究極的なメタの破壊です。
CTまとめ
Astralis は敵の作戦自体を潰すプレイを多く行う。
Liquid とは
チームプレイを究極に極めたチーム
TR
根本的な考え:本命に全員で攻める。
根拠:爆弾は隊列最後尾が持っているため。
→後ろに残る人がいない。
→全員で詰めている証拠。
つまりこういうこと。
基本的に、道中で死ぬリスクのあるプレイは行わない。
→本命に全員で攻めるというコンセプトから外れてしまうため、1人でサイトを攻めることは滅多に行わない。
※ただし、Inferno においてはバナナの攻防が非常に重要であるため、バナナでの戦闘にて数人死ぬことがあります。
この仮説が正しいかどうか統計を取ったところ、キル/デスタイムが Astralis と比べて密集的に分布していることが分かりました。
→Astralis より団体行動を行なっている証拠。
以下のグラフの線が綺麗に揃っているほど、キル/デスタイムが同じ(=キルトレードを行なっている)ことを表します。
Liquid
Astralis
死者無しでバナナが取れた場合、そのままセットプレイを行うことがあります。
Liquid:2試合28ラウンド中、A: 11回、B: 4回。
Astralis:2試合24ラウンド中、A: 2回、B: 5回。
ここで言うセットプレイとは、
・スモークの直炊きを行わない(顔を出して投げない)
→AならT字より手前、Bならバナナから投げ物を使う。
→エントリーとサポートが明確→組織的なプレイである証拠
・フェイクではない。(本命である)
・スモークが晴れる頃にはエリミネーションが完了している。
などの要素を適当に考慮してカウントした。
セットプレイの例
準決勝6ラウンド目
決勝7ラウンド目
決勝10ラウンド目
これはさすがに憶測の域ですが、nitr0 が思い描く最終目標は設置する前にラウンドの勝敗を決すことだと思います。
根拠
・設置後に使う投げ物を一切残していない。
・人数が多いサイトに敢えてセットプレイを仕掛けている。
以下の試合が特に顕著な例だと言えるでしょう。
ESL One: Cologne 2019 vs NaVi in Overpass
数ラウンドかけてBサイト守りが3〜4人であることを確認した上で、初手Bセットを仕掛けてます。
5ラウンド目:Aスタンダード→B
6ラウンド目:B→A切り返し
7ラウンド目:シンプルB
8ラウンド目:Bセット
このように、敵を一気に殲滅させる総力戦のようなスタイルは、Liquid 独自のプレイイングスタイルと言えるでしょう。
TRまとめ
Liquid は本命に向かって全員で攻める。
CT
根本的な考え:互いにカバーし合って守る。
釣り行為
決勝17ラウンド目
釣り:NAF、本命:Stewie2K
決勝21ラウンド目
釣り:NAF、本命:Stewie2K
これは加えて EliGE の FB のカバー付きです。
複数人で同じ場所、アングルを見る
準決勝27ラウンド目
決勝26ラウンド目
ESL Pro League Season 10: Finals vs Astralis
こういう布陣を取られると、ワンチャンすら無いですよね。
ネコチャン ( •ω•ฅ)ニャ
リテイク
TR の「全員で攻める」の裏返しですね。
準決勝22ラウンド目
重要なのは、投げ物を余らせている NAF がサポートを行い、ロールを遂行している点です。
→アタッカーとサポートが明確
→組織的なプレイである証拠
おそらく即興で組み立てたプレイイングでしょうが、フラッシュと同時にコイルとCTからピークしたり、隠れている gla1ve を2人で挟み込むなど、無駄な行動がありません。
まさにチームプレイを極めたチームのみが遂行できる作戦だと言えるでしょう。
リピークをしない
死ぬ可能性があり、「互いにカバーし合う」というコンセプトから外れる行為であるため、リピークは滅多に行いません。(イレギュラーが存在しますが、詳細は後述)
その代わり、チャンスがあればA4配置を積極的に行います。
準決勝22ラウンド目
ESL Pro League Season 9: Finals vs Astralis
Liquid が 16-6 で Astralis を下した試合です。
Astralis は4人のAサイトへ攻め込んでしまい、敗北します。
→敵の本命がBでも、Bリテイクに自信があるため、A側で無理やり情報を取る必要がない。
A4からのリテイク例
NAF のモク抜きぴえん。。NAF HAS NO MERCY...!
CTまとめ
Liquid はA4-B1配置で守り切ることができれば強い。
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