【VALORANT】セットプレーの目的と導線
本記事は、下述する記事の子記事です。前置きや手引き、目次などについての詳細は親記事を参照ください。
セットプレーとは
【セットプレー】、【セットアップ】、もしくは略して【セット】と呼ばれる戦術は最も基本的な攻め方で、役割が分担されているプレイのことを指します。
英語圏では【Execute】と呼ばれることが多いです。
Laz氏(2020)は、セットプレーについて「サイトに攻め込むときに基本となる戦略」*1と定義しています。
※正しくは戦略ではなく戦術
Xizt氏(2020)はプレイヤーに役割を与えること(=セットプレー)のメリットについて、以下のように主張しています。
having a more strict approach will make sure that those individual plays are reduced to a minimum as much as possible, allowing for more effective trades and counterstrats.*2
クソ翻訳:より厳密なアプローチを取ることは、個々人のプレーが可能な限り最小限に抑えられ、より効果的なトレードキルが発生し、それは敵の対策へのカウンターになります。
このように、爆破FPSでは役割があるプレイ=セットプレイは効率的であると知られています。
セットプレーはアビリティを合わせてサイトに攻め入る戦術という認識がある方が多いかと思いますが、厳密には意味合いが異なっています。
例えば下記の攻め方は典型的なセットプレーの一種であるので、まあ見ればわかります。
セットプレーの目的
VCT 2022 Stage 2: Masters Copenhagen
FunPlus Phoenix vs. XERXIA - Ascent 20ラウンド目
解説のyukishiro氏もセットプレーであることに言及していますね。
余談ですが、このように持ち合わせているリソース(=アビリティ)を余すことなく使ったセットプレーのことを、特筆して【フルセット】と呼ばれることがあります。
ちなみにこのセットプレーが特徴的である点は、フルセットであることだけではなく、その後のKAY/O ULT対策にもあります。
防衛側はKAY/O ULTを保持しているため、防衛側のKAY/O ULTを起点にAサイトのリテイクを図っている可能性が推測されます。それを踏まえて攻撃側はKAY/O ULTを使用されるとアビリティが一切使えなくなるため、それまでにアビリティは全て使い切っておこうという戦略が思い描かれます。(もし相手が完全なリテイク配置ではなくAサイトに潜んでいたらラッキーというのもある)
しかし、それだけだと単にアビリティを使い切ってサイトを取っただけになってしまい、結局KAY/O ULTによるリテイクを許してしまうため、その対策としてリテイクでAサイトを挟み込まれる前に、Aショートで防衛側を迎え撃ってリテイクを阻止しようというのがこのセットプレーの思惑です。
つまり、yukishiro氏が「セットプレーですね」と言及したこの場面ではすでに、
Aサイトを取った後、更にAショートへ侵攻するまでの道筋を、攻撃側の選手たちは思い描いていたわけです。
ここで重要なのが、ミッドを経由してAショートを挟み込んでくる、フランカーのフェイドの存在です。
用語:フランカーとは
このAショートで殲滅を試みる作戦は、重要な射線を生んでいるフェイドの存在なしには実行することができません。その上、フェイドを活かすためには正面火力は欠かすことができません。
ただし、ジェットはAサイトにエントリーを行って味方のカバーとしてヘブン下に駐留していたため、Aショートに侵攻するエージェントは の3人となります。
この、Aショート本隊、フランカー、Aサイトエントリー⇒アンカー(ハイブリット)といった役割分担こそがセットプレーの本質です。
上例のセットプレーの導線を図に示すなら下記になります。
ここまでのまとめ
・セットプレーはアビリティを合わせてサイトへ攻める戦術というわけではなく、あくまでアビリティ合わせは単なる手段の1つである
・アビリティ合わせ等のセットプレーを経て、どのような結果が得られたいのか目的を明確化させ、それぞれのプレイヤーがどのような導線で動き、どのような役割を担うのか(どのようなExecuteをするのか)が重要
セットプレーにおける導線
前セクションではセットプレーにおける導線と目的という観点を説明したので、もう1つ別のセットプレーを見て、導線と目的について理解を深めていきましょう。
VCT 2023: Pacific League
Global Esports vs. ZETA DIVISION - Ascent 12ラウンド目
段階①
段階②
導線
はいもう解説するまでもなく導線がおかしいですよね。
このセットプレーのマクロな目的・戦略としては、Aサイト・Aメインの挟み込みです。
その目的を達成する過程で、ガーデン・ヘヴンの強襲というミクロなアビリティ合わせの要素も持ち合わせています。
上記のように、このセットプレーはミクロな要素もマクロな導線・目的も非常に強力なものとなっており、初めのアビリティ合わせて2キル、最後のA挟み込みで1キルを獲得し、防衛側が3人で守りを固めていたAサイトを攻略することに成功しています。
このようにセットプレーではアビリティを合わせることだけに重点を置くのではなく、視点を広げて「どのように攻めるのか、そのためにはどんな導線が必要なのか、そのためにはどうやってアビリティを合わせて、どう役割を分担する必要があるのか」といった目的から逆算した思考が重要となります。
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