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ゲームと音楽について雑記

【VALORANT】5v5タクティカルFPS(爆破FPS)のチームプレイにおける基礎 - 導入

 

 

この記事は、VALORANTがリリースされてすぐ(2020年7月)に執筆された、以下記事の改良版です。

amboxambo.hatenablog.com

 

旧記事では CSGO の例を挙げて冗長になっていたり、抜けている重要な概念がありました。

そのため、旧記事を更新するのではなく、一から新しく記事を再構成したいと思います。

 

 

※この記事は、2021年10月27日時点のライアットゲームズのサービス規約*1とLegal Jibber Jabber*2に同意した上で執筆されています。Riot Gamesはこのプロジェクトを推奨または後援しません。

 

 

導入

 

はじめまして。

プロゲーミングチーム IGZIST でコーチ・アナリストを務めております、Ambox と申します。

 

Riot Games による爆破FPS『VALORANT』の盛り上がりは留まることを知りません。

2020年6月の日本大会『RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL』での視聴者数は4万人 *3 であったのにも関わらず、

2021年8月の世界大会 国内予選『VCT 2021: Japan Stage 3』での視聴者数は16万人 *4 まで増え、

2021年10月のアジア予選『VCT 2021: APAC LCQ』では、日本チーム Northeption の試合が18万人弱 *5

を記録しており、着々と人気を博しているのが分かります。

 

盛り上がっているのは競技シーンだけではありません。

2021年9月に開催された日本大会『UTAGE VALORANT Season 3』では、1422人 250チームの参戦が報告 *6 されており、

また、定期的に開催されているコミュニティ大会『Valorant From Tokyo』*7『VALORANT LIGHT TOURNAMENT』*8『Valorant Rookies Challenge』*9 などの存在も鑑みると、

一般層にも VALORANT のチーム活動が広く浸透していることが読み取れます。

 

 

しかし、これほどチーム活動が一般的になっているのにも関わらず、チーム活動に関する情報であったり、具体的な指南を述べている人・動画・サイトなどはほとんど存在しません。

そこで本記事では、競技シーンで活躍している人なら誰でも身につけている基礎的な概念を述べていきます。

 

 

対象・チーム活動における大前提

 

チーム活動を行う上で必須なのが、文化的最低限度のエイム力を持ち合わせいることです。

ここでいう「文化的最低限度」というのは、例えばジェットf:id:amboxambo:20211025180743p:plainを使うなら絶対にワンキル取れるとかではなく、敵の側面を突くことができたならば絶対に1キル取れることを指します。

 

具体的なランクで述べるなら、ソロでダイヤ帯に行ける実力があることは重要な目安のひとつでしょう。

主観ですが、この辺りのランク帯からいわゆる「クソエイム」の頻度が下がり、撃ち合いのレベルがグンと上がっているように思えます。

 

具体的なエイム練習で指針を述べるなら、ハードBOT撃ちで安定して15体以上倒せたり、Kovaak's の Valorant Small Flicks で110以上、Ascended Tracking v3 では10000以上のスコアを出せることなどが挙げられます。

 

また、パーティではなくソロで十分に戦えるということは重要な指標の1つであり、1人でキルを取る技術を持っていないと、例えばチームプレイから解放された瞬間や少人数戦において勝ち筋を逃してしまいます。

 

 

チームプレイから解放された瞬間

例1

VCT 2021: Japan Stage 3 - BlackBird Ignis vs. Crazy Raccoon [Ascent] - 24ラウンド目

防衛側キルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plain 1v5

防衛側目線、A側に敵ブリーチf:id:amboxambo:20211025185106p:plainのフォルトライン、スカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plainがULTオーブを取る音、ジェットf:id:amboxambo:20211025185245p:plainを視認などの情報からA最低3人確定

+ B側は敵のアクションが無く、ミッド・マーケットまでキルジョイf:id:amboxambo:20211025185430p:plainのアラームボットでクリアリングできている状況下で、敵の本命はほぼA確定だと読み、A4-B1配置で敵のA攻めを迎え撃とうとします。

 

しかし実際は迅速にBへ切り返しされ、B1守りの絶対的不利・絶望的シチュエーションで、防衛側キルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plainはBサイト奥で巧みに立ち回って1v1を幾度も繰り返し、Aサイト内で守っていた味方ジェットf:id:amboxambo:20211025185245p:plainがBサイトまで援護に駆けつけるまでの時間を稼ぐことに成功し、見事ラウンドを勝利に導きました。

 

 

例2

VCT 2021: EMEA Stage 3 - Gambit vs. Team Liquid [Split] - 19ラウンド目

防衛側サイファf:id:amboxambo:20211025190844p:plain 1v5

例1と同様に、一人で守っていた防衛側サイファf:id:amboxambo:20211025190844p:plain巧みな立ち回りによって1v1を幾度と繰り返し、敵の本命攻めを一人で壊滅させました。

 

 

例1のキルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plain、例2のサイファf:id:amboxambo:20211025190844p:plainは共に【静的プレイヤー(Static Player)】と呼ばれる役割(詳細は後述)を担っており、防衛側において必須の役割です。

 

 

この静的プレイヤーとしての役割を遂行するため(=チーム活動を行うため)には、以上のようなレジェンドプレイとまではいかなくとも、敵の本命攻めに対してコンスタントにキルを取ることのできる包括的な個人技(エイムや立ち回りなど)を有していることは大前提です。

 

 

少人数戦

例3

VCT 2021: EU Stage 2 - Team Liquid vs. Fnatic [Haven] - 28ラウンド目

攻撃側ジェットf:id:amboxambo:20211025185245p:plain 1v2

銃声・足音などにより敵の場所は全て把握している状況下で、攻撃側ジェットf:id:amboxambo:20211025185245p:plainはまず敵に側面・背面を取られない場所にポジショニングします。

f:id:amboxambo:20211025193555p:plain

そして敵ジェットf:id:amboxambo:20211025185245p:plainが犯したミスを逃すことなくキルし、オーメンf:id:amboxambo:20211025193909p:plainに対する1v1もタイミングを見計らってこちらから撃ち合いを仕掛けることによって有利な状況を作り、見事ラウンドを勝利に導きました。

 

このように、得られた情報を用いて巧みに立ち回ることによって、たとえ人数不利状況下だったとしても有利な撃ち合いを仕掛けることが可能です。

 

 

例4

eGG esports challenge G-Tune VALORANT INVITATIONAL - FAV gaming vs. SCARZ [Icebox] - 16ラウンド目

攻撃側オーメンf:id:amboxambo:20211025193909p:plain スカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plain 2v2

攻撃側オーメンf:id:amboxambo:20211025193909p:plainはスモークが残っているのにも関わらず、あえてスモークを炊かずに設置音を鳴らすことによって敵のミスを誘発させようと企てます。

結果、敵レイナf:id:amboxambo:20211025195823p:plainのピークを誘発させ、見事仕留めることができました。

 

また、スカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plainはBサイト深くまで侵入することができていたため、オーメンf:id:amboxambo:20211025193909p:plainの設置音によってサイトに注目が向いている防衛側の背面を取るために裏取りを行います。

結果、無防備な敵キルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plainの背面を突くことができました。

 

 

このシーンは人数差だけ見れば戦局はイーブンのように思えますが、立ち回りであったりスカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plainが確保したエリアを巧みに用いることで、実は攻撃側有利な状況を作り出すことが可能だったのです。

 

爆破FPSにおいて5v5である状況は少なく、少人数戦である場合がほとんどです。

よって、少人数戦ではそれぞれの包括的個人技が勝敗に直結していきます。

 

語弊が無いようはっきりと申すならば、もしチーム内に個人技が足りていない選手がいる場合、例えば3v5の不利状況から上手い選手が頑張って2v2の人数差同等シチュエーションに持ち込んだとして、ここで個人技が足りていない選手が残っているとすると、チームメイトがせっかく勝ち筋を用意してくれたのに、その勝ち筋を拾い切れることができません

 

ゆえにチーム活動を行うにあたって、味方と連携が取れたりソーヴァf:id:amboxambo:20211027103513p:plainのリコンボルトを多く覚えていることよりも、少人数戦が強い(一人でキルを取る技術を有している)ことの方が遥かに重要なのです。

 

 

チーム活動とは

 

以上のように、チームを組むにあたって文化的最低限度のエイム力を身に付けていることは大前提です。

 

上述の例のように、包括的な個人技がある相手に対して、正面から正々堂々と撃ち合いを仕掛けてしまうと返り討ちにされることがあります。

私の中での見解として、チーム活動をひとことで述べると、上例のような敵の個人技のゴリ押しを極限まで抑制し、敵にまともな撃ち合いをさせずに勝利を掴むことであると考えています。

 

その最たる例として、動きや役割が軍隊の如く事細かく決められている【セットプレー(Execute)】(詳細は後述)が挙げられます。

 

例5

VCT 2021: Masters Reykjavík - Version 1 vs. NUTURN [Ascent] - 22ラウンド目

攻撃側

ヴァイパーf:id:amboxambo:20211027103350p:plain、アストラf:id:amboxambo:20211027103404p:plainのアビリティで射線を切り、キルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plain、ヴァイパーf:id:amboxambo:20211027103350p:plain、アストラf:id:amboxambo:20211027103404p:plainがサイト内にアビリティを使うことで、目視でのクリアリングが必要なポジションはサイト手前とヘブン下だけに限定されます。

f:id:amboxambo:20211027110310p:plain

そしてジェットf:id:amboxambo:20211025180743p:plainがテイルウインドによって手前をクリアリングし、残ったヘブン下を決め撃ち気味にピークすることでサイトを完全に掌握します。

 

後続のキルジョイf:id:amboxambo:20211025183932p:plain、ソーヴァf:id:amboxambo:20211027103513p:plainはヘブンやAショートのスモーク抜けをケアすることでカバーし合い、最後列のヴァイパーf:id:amboxambo:20211027103350p:plainは裏詰めを警戒して有利なポジションから相手を待ち受けています。

 

防衛側はこの完璧な連携のセットプレーの前に為す術なく敗北しました。

 

 

例6

VCT 2021: Japan Stage 3 - BlackBird Ignis vs. Storks Phalanx [Haven] - 16ラウンド目

防衛側

ブリーチf:id:amboxambo:20211025185106p:plain スカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plainのフラッシュを起点にジェットf:id:amboxambo:20211025180743p:plainがテイルウインドで強襲します。

スカイf:id:amboxambo:20211025185142p:plainULT・アストラf:id:amboxambo:20211027103404p:plainのスモークやグラビティウェルでジェットf:id:amboxambo:20211025180743p:plainのサポートを行い、ジェットf:id:amboxambo:20211025180743p:plainに注目が集まっている中、残った四人は一気にサイトへ雪崩れ込み、サイト内の制圧を図ります。

 

攻撃側視点

 

 

展望

 

以上のような相手に撃ち合いをまともにさせない手法はセットプレー以外にも数多く存在し、当然その対策やカウンターも存在します。

 

本記事では基本的にこれらの具体的手法や対策について述べていき、その途中で特筆すべき概念や考え方があるなら随時述べていきたいと思っています。

 

 

予定しているコンテンツ

 

概念

amboxambo.hatenablog.com

 

amboxambo.hatenablog.com

 

┗ 少人数戦の基本

 

攻撃側

┣ オブジェクトルールを活用した勝ち方

┗ 7つの戦術と3つのプレイスタイル

amboxambo.hatenablog.com

 

防衛側

┣ 情報取り

┣ 本命攻めに対する抗い方

┗ 凝固 / 動脈切り

 

 

更新するのかなり遅いと思うので、完成したらTwitterで報告したいと思っています。

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