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【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第13章- 防衛側の役割と作戦

 

本連載記事は旧コンテンツです。

新バージョンを下記にて連載予定です。

amboxambo.hatenablog.com

 

これの続き

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

防衛側の組み立て

 

9~11章では、攻撃側の作戦の組み立て方を述べましたが、この章では防衛側の作戦について具体例を述べたいと思います。

 

 

役割

 

防衛側の作戦を理解するためには、まず防衛における役割を知ることが重要です。

 

MAX氏(2017)は、爆破FPSの守備における役割について、以下のように分析しています。

There are two roles on CT-side. The rotating player(中略)has to be able to provide backup for the other bombsite as fast and safe as possible.

The static player is generally looking to hold the bombsite as long as possible. He has to try to gain crucial seconds for his team-mates rotations.*1

クソ翻訳:防衛側には2種類の役割があります。【交替プレイヤー(Rotating Player)】は、できるだけ安全で迅速に他のサイトのバックアップを行う必要があります。

【静的プレイヤー(Static Player)】は、サイトを可能な限り長く守る役割です。チームメイトが寄ってくるまでの時間を稼ぐ必要があります。

 

 

加えて、Bridge氏(2018)も同様に以下のとおり述べています。

they tend to have two players that are dedicated to a specific role or function within the match.

A rotating / pivot player(中略)is usually floating around various different parts of the map in order to provide a rapid response to different situations. They also provide support for the team once the fire fight starts(中略).

The other role, is the defensive / static player. Essentially, this player is looking to hold objectives and keep the enemy team back for as long as possible until the rest of the team turn up.*2

クソ翻訳: 防衛側では、試合内の特定の役割や機能に従事する2種類のプレイヤーが存在します。

【交替・旋回プレイヤー(Rotating / Pivot Player)】は、通常、様々な状況に迅速に対応するため、マップ上の多種多様な場所で転々としています。彼らは戦闘が始まると、チームをサポートします。

もう1つの役割は【防御・静的プレイヤー(Defensive / Static Player)】です。この役割の選手は、目標を保持し続け、チームメイトが援護に来るまで可能な限り敵の侵攻を遅らせることを目指します。

 

 

つまり、マップ上を縦横無尽に動き回る選手サイトを保持し続ける選手の2種類の役割があるということです。

 

サイトを保持し続ける選手の重要さが実感できるラウンド

GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020 Crazy Raccoon vs. Way Myriad [Bind]

7ラウンド目

Aにスパイクが落ちるものの、防衛側サイファーはAへ寄らず(ちょっと寄ったが)Bへ残り続けます。

結果、敵はBへ切り返してきたため、有利なポジションから迎え撃つことができました。

 

 

この防衛側の役割ついては様々な名称が用いられているため、この記事では KuniCchi氏(2016)が提唱されている、より直感的な和訳である「動的プレイヤー」「静的プレイヤー」*3といった名称を使っていきます。

 

 

アセントで例えると、動的プレイヤーはこのエリアで守っている人のことを指します。

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いわゆるミッドであったり、A・Bサイトから外れた場所で守ることが多いです。

 

対して静的プレイヤーは、サイト内のエリアだったり、サイト前目で守っていることがほとんどです。 

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守備という形態から、多くの場合はこれらの配置そのものが作戦になることが多いです。

 

攻撃側の作戦で「第一次作戦」「第二次作戦」などの種類があったように、防衛側においても、以下のようにいくつか作戦を分類できます。

  • スタンダード・偵察配置 
  • 集中配置
  • 積極的エリア確保
  • 消極的エリア確保(リテイク配置)

 

これらは8〜9章にて少し触れましたが、事細かく述べ切れていませんでした。

ではどういった時にこれらの作戦・配置を行うのか、実際の試合を通じて見ていきたいと思います。

 

 

この章では、VALORANT へ移行してわずか2週間で日本大会『RAGE Japan Tournament』でベスト4を達成した、BlackBird Ignis のとある試合を考察していきます。

 

 

BlackBird Ignis の実例 

 

BlackBird Ignisの守り方は、CSGOで養われた知識や経験を基にしているため、どの守り方を切り抜いてみても爆破FPSです。

これがVALORANTにおいて正解であるかどうかは現段階では正直分かりませんが、そもそも爆破FPSの基礎であるこのプレイが理解できないと、VALORANTにおける発展戦術が何なのか考察できないため、ここではこのBlackBird Ignisのような守り方ができるようになることを第一目標としておきます。

 

1〜2ヶ月後には意見が変わってるかもしれません。sry

 

 

RAGE Japan Tournament SunSister Rapid vs. BlackBird Ignis [ASCENT]

1ラウンド目(ピストルラウンド)

A2 - Aミッド1 - B2スタンダード・偵察配置

 

→ミッドが薄いことを確認

 A3 - B2(サイト集中配置)

 

ソーヴァの位置がバレるのが遅かったことと、A側の動的プレイヤーの寄りが早かったため、相手のBファストを止めることができました。

 

 

このラウンドで特筆すべき点は、セージがAサイトに残り続けていることです。

まだスパイクが見えておらず、Aの可能性があるため、セージは静的プレイヤーとしてAをホールドし続けました。

 

セージは静的プレイヤーとして優秀ですね。

バリアオーブスロウオーブで時間を稼ぐことができるので、サイトをホールドする役目を担いやすいです。

 

逆に、コントローラーやデュエリストは縦横無尽に動き回ってサポートするのに適しています。

この場合でも、オーメンがA側からBメインにダークカヴァーを使って、遠くからBをサポートしていました。

 

  

2ラウンド目(フォースバイラウンド)

A1 - Aミッド1 - ベース1 - Bミッド1 - B1スタンダード・偵察配置

 

リコンボルトでAクリアを確認

 A1 - ベース1 - B3(B集中配置)

 

→Bから気配が消える

 A2 - ミッド1 - B2スタンダード・偵察配置

 

オウルドローンでBクリアを確認

 A3 - Aミッド2(A集中配置)

 

どの段階を切り取ってみても分かると思いますが、戦略レベルでは常に敵の位置をを掌握して凌駕していました。

敗因としては、武器の購入状況の読みが外れてしまったことが挙げられます。

 

通常、ピストルラウンドで敗北した側は、2ラウンド目では何も買わないのがセオリーです。なぜなら、3ラウンド目でヴァンダル・ファントムが購入できるからです。

 

そこでメタとして、ピストルラウンドで勝利した側はゴーストで対抗するという戦術が一般的です。

 

しかし、以下のように、ピストルラウンドで敗北した SunSister Rapid は、BlackBird Ignisより強靭な武器を購入しています。

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これを【フォースバイ(Force Buy)】と言います。

 

このように、武器購入の読み合いで防衛側は優位性を獲得できなかったため敗北してしまいました。

 

 

3ラウンド目(エコラウンド)

A2 - Aミッド1 - B2スタンダード・偵察配置

→A3 - B2(サイト集中配置)

 

エコラウンドでは、武器差のせいで勝てる確率が低いため、基本的に味方とカバーし合って守ることを推奨します。

例えば、Bサイトではジェットとサイファーがクロスファイアの陣形を組んでいました。

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残念ながら、敵フェニックスのラン・イット・バックによってキルを取ることはできませんでしたが。

 

 

4ラウンド目(1stバイラウンド)

A1 - Aミッド1 - ベース1 - Bメイン2(Bメイン積極的エリア確保

Bメインが取れた瞬間にベースのオーメンがBへ寄ってきているので、パラノイアを起点にジェットとセージでBを取ろうとしたのだと予想できます。

しかし、敵のオウルドローンで位置がバレてしまったため、やむを得ず作戦を中止したんだと思います。

 

→A1 - Aミッド1 - ベース1 - Bミッド1 - B1スタンダード・偵察配置

 

ここで敵のA攻めによってAの2人がやられてしまったため、消極的リテイクを行います。 

 

リテイクの基本として、人数が多い場所が先行して戦闘を行います。

つまり、ここでは2人のヘブン→1人のAショートという順で戦闘するのが最適です。

 

理由:FPSの基本 カバー

ここで述べることではないので、詳細はえびまよ氏の記事を参照↓

 

非常に綺麗なリテイクですね。

さすが、CSGO出身の5人固定チームというのは伊達ではありません。

 

逆に言えば、CSGO出身の5人固定チームでなければ綺麗なリテイクができないのかと言うと、全くもってその通りです!

今はどこも急増チームが多いため、VALORANTのプロチームと言えども、コミュニケーションや連携が取れず、配置やリテイクでグダグダし、自滅しているチームをいくつも見かけます!

VALORANT独自の技術を磨く前に、まずはこういった爆破FPSの基礎的ムーブをチーム全員ができるよう修練を重ねましょう!

 

 

5ラウンド目(2ndバイラウンド)

A2 - ベース1 - Bミッド2(Aロング積極的エリア確保)

ここでオペレーターを持ったソーヴァがAロングを前目で抑えますが、敵のクラウドバーストによってオーバーピークせざるを得なくなり、帰れなくなったところを仕留められてしまいます。

 

 

防衛側におけるアグレッシブなオペレーターは非常に重要です。

オペレーターを使うことで、キルを取る→すぐ引くというムーブメントを行うことができるため、基本的にはアグレッシブなオペレーターはローリスク・ハイリターンの作戦として知られています。

 

防衛側のアグレッシブなスナイパープレイが重要であることを述べた、私の過去記事

amboxambo.hatenablog.com 

amboxambo.hatenablog.com

 

結果的にこのように返り討ちに遭ってしまった場合は、相手が一枚上手だったと諦めましょう。

 

しかし、リスクを極限まで減らす努力を怠らないことは必要です。

もし味方のカバーがあれば、この5ラウンド目での結果は違ったものになっていたでしょう。

オーメンがいるのだから、以下のようにパラノイアを準備してあげてもよかったかもしれません。

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→A2 - B2(サイト集中配置)

初手で人数が削れてしまい、これ以上リスクを犯して情報やキルを取ることができないため、何も情報を得ていないのにも関わらずここでサイト集中配置を取ります。

 

えびまよ氏(2019)は少人数戦時の守備について、以下のように分析しています。

絶対的に言えることは情報取りはもう必要ない。配置変えの時間は終わったから。

つまりあとやることは引き守りでお祈りするだけ*4

 

「お祈り」とはまさしくその通りで、このラウンドではもう戦略で相手を上回ることができないため、勝利を得るためには勘・運・博打などで優位性を得るか、撃ち合いで敵を圧倒する必要があります。

 

BlackBird Ignis による選択は、ハイリスク・ハイリターンの作戦である博打のBメインプッシュでした。

残念ながら刺さりませんでしたが。

 

 

6ラウンド目(エコラウンド)

A2 - Aミッド1 - B2(サイト集中配置) 

ジェットはショーティーを有効な射程距離で戦うため、Aサイトのかなり前目で待機します。

敵のリコンボルトが発射されるところを視認したため、リスクを恐れず一気に前へ詰めました。

 

 

7ラウンド目(3rdバイラウンド)

Aミッド2 - ベース1 - B2(A積極的リテイク配置)

なぜ初手からAを捨てているかと言うと、リコンボルトパラノイアハンターズフューリーのコンビネーションプレイを行うためです。

 

加えて、このラウンドではサイファーをBへ配備しており、Aサイトを守り切れない(守備に適したエージェント=静的プレイヤーがいない)ため、積極的リテイク配置を取っています。

 

対してBサイトは、サイファーとセージのダブルセンチネルで鉄壁の布陣を敷いているため、敵のラン・イット・バックでBに侵入されても、Aの動的プレイヤーはBへ寄る必要がないのです。

逆に言えば、AからBへ寄ってしまうとA側の積極的リテイク配置が崩れてしまうため、初めからAからBへ寄る必要のない配置=作戦を取っているのです。

 

そしてAサイトが取られた後は、Aのオーメン・ソーヴァとBのセージ・サイファーの4人でミッドをクリアリングし、単独行動していた敵を各個撃破しています。

お手本のように美しい積極的リテイク配置です。

 

 

8ラウンド目(4thバイラウンド)

A1 - Aミッド1 - ミッド1 - Bミッド1 - B1スタンダード・偵察配置

 

→オペレーターがミッド前目で偵察していたが、1キルできなかった + 敵のダークカヴァーで情報が得られなくなる

 A1 - Aミッド1 -スポーン1 -Bメイン2Bメイン積極的エリア確保

 

→敵のオウルドローンで、セージが不自然にBメインをピークしているのがバレたため、Bメインから撤退

(Bメインを取ろうとしていた最中なのか、Bメインを取った後であると容易に想像できる)

 

 

オウルドローンでBメインクリアを確認

 A1 - Aミッド3 - B1A集中配置

 

 

特筆すべきなのは、ソーヴァが静的プレイヤーとしてBに残り続けていたことです。

私は1ラウンド目の備考で「セージは静的プレイヤーとして優秀」とは述べましたが、最適であるとは主張していません。

 

Lopez氏(2020)は役割における注意点として、以下のように述べています。

players will not always stick to one role and should be able to fill whatever role is missing from their team.(中略)Understanding the different roles and their responsibilities can help players identify what is missing in their team and allow them to adjust accordingly. Teams that consist of players who can correctly and efficiently fill a roll will be better prepared than a team with no strategy or defined goals.*5

クソ翻訳:プレイヤーはいつも1つの役割に固執するわけではなく、チームで欠けている役割を担う必要があります。(中略)プレイヤーは様々な役割を理解することで、どの役割が欠けているのかを特定し、チームに適合することを可能とします。正確で効果的な役割を満たすことのできる選手によって構成されたチームは、戦略や目標が定義されていないチームよりも適切に準備されます。

 

 

Laz氏(2017)も同様に、以下のように説明しています。

役割は状況によって入れ替わる事がある為、どれか一つにだけ精通すれば良いという訳ではありません。特にアタッカー枠、メイン枠には全員がなり得るので自分に求められている役割が何なのかをその場その場で判断しながら上手く立ち回ると連携が格段に取りやすくなります。*6

 

つまり、誰が静的・動的プレイヤーとして適するのかは状況ごとに異なるということです。

セージは時間稼ぎができるのが利点ですが、この場合は安全にクリアリングできるソーヴァが静的プレイヤーとして最適だったでしょう。

 

このように、それぞれの役割を理解して状況ごとに遂行することは、チームプレイを行うにあたって非常に重要です。

 

 

9ラウンド目(5thバイラウンド)

A1 - Aミッド1 - ミッド1 - Bミッド2B消極的リテイク配置

 

ミッドで敵オーメンが毎回ぴょんぴょんしているので、とりあえずそれのキルを狙おうという作戦です。

ミッドの選手は前目に詰めており、スポーン側からすぐにB側へカバーができないため、B側はファスト対策として消極的リテイク配置を取っています。

 

しかし敵のミッド侵攻が思った以上に早かったため、ミッド前目で孤立していたジェットが狩られてしまいます。

 

→ミッドが完全に取られてしまったため、ここでソーヴァがBメインに対して消極的エリア確保を仕掛けます。

 A1 - スポーン2 - Bメイン1(消極的エリア確保)

 

→敵ジェットにBメインのアグレッションがバレてしまったため、サイト中へと戻ります。

 A2 - B2(サイト集中配置) 

 

オウルドローンでBメインクリアを確認

 A2 - スポーン1 - B1(A集中配置) 

 

ここで敵のA攻めと遭遇し、見事勝利しました。

 

 

このラウンドで特筆すべきなのは、やはりAのサイファーの動きでしょう。 

静的プレイヤーとして最終局面まで生き残り続け、キルも時間も稼いだ功績は偉大です。

 

このサイファー、oitaN氏は日本屈指の静的プレイヤーとして有名です。

静的プレイヤーのムーブについて学びたいなら、まずはoitaN氏のムーブを完コピすることを推奨します。

 

CSGOにおけるoitaN氏のプレイイングを多くピックアップし、とあるマップでの静的プレイヤーのムーブを考察した、私の過去記事

amboxambo.hatenablog.com

  

 

10ラウンド目(アンチエコラウンド)

A1 - Aミッド2 - ミッド1 - Bミッド1(ミッド積極的エリア確保)

ここまで3ラウンド連続で勝利しており、相手にクレジットがないことが確定するため、アンチエコとしてミッドを取ります。

 

B側は人員が少ないため、ファスト対策として消極的リテイク配置を取っていたのですが、セージが配置転換しているタイミングで敵フェニックスがスッとBメインから抜けたため、Bサイトに侵入を許してしまいます。

 

そしてリテイクの場面ですが、チームメイト全員でコミュニケーションを取り、オペレーターのジェットがBメインを抑え、その隙にアサルトのオーメンサイファーがサイトへ突入します。

 

 

 

あとの2ラウンドは特筆すべきことがなかったのでカット 

 

 

次 SunSister Rapid のリベンジマッチでの、BlackBird Ignis のカウンター

 

 

 

 

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