Ambo consists of Ambox

ゲームと音楽について雑記

【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第10章- 作戦の組み立て

 

本連載記事は旧コンテンツです。

新バージョンを下記にて連載予定です。

amboxambo.hatenablog.com

 

これの続き

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

作戦の組み立て

 

攻撃側・防衛側の戦術をそれぞれ覚えたなら、後はそれをいつ行うのかを知るだけです。

特定の作戦を刺すことができるようになったら、ようやく爆破FPSにおけるチーム活動ビギナー卒業と言えるでしょう。

 

その作戦が刺さる状況を作ることを「作戦の組み立て」「指揮構成」*1などと呼びます。

 

この指揮構成について、えびまよ氏(2019)は作戦が刺さる状況を以下のように述べています。

極論で言えば、攻め側において常にBラッシュしかしないチームが、一番最後のラウンドでAにラッシュをしたらどうなるのか。って考え方です。

守り側は「相手Bラッシュしかしてこねえからもう最初からB5人にしようぜ」って考えるわけです。そこを突くわけです。*2

 

まさにこの状況を体現した試合

GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2019 Ignis vs. Absolute [Overpass]

18-23ラウンドを踏まえての24ラウンド目

Bファストを5回連続で行なった後のAファストです。(上の動画ではBファストの過程は省略)

この時の防衛側はBファストを警戒するA消極的リテイク配置を取っており、Aを守り切ることはできませんでした。

 

このように、敵を思うがままに揺さぶらせ、撃ち合いをすることなく大局的な戦略で圧倒することを【会話する(Asking)】と言います。

 

 

作戦で会話

 

作戦で会話するためには、相手に特定の作戦を警戒してもらわなくてはいけません。 

 

爆破FPSでは、マップごとに最も効果的な作戦というのが大抵決まっています。

これを【第一次戦術(Primary-strats)】と呼びます。

 

 

CSGOでの例

 

例えば、CSGOのDust2というマップでは、Aファストが挙げられます。

IEM Katowice 2020 Natus Vincere vs. Liquid

15ラウンド目

このように、通常なら防衛側は為す術がないまま薙ぎ倒されてしまいます。

 

しかし、防衛側はこれに全く対抗できないというわけではなく、特化した対抗戦術を行うことで解決します。

Aファストがじゃんけんでいう「グー」なら、防衛側は「パー」を出せばいいのです。

 

IEM Katowice 2020 Natus Vincere vs. Fnatic

6ラウンド目

Aファストを警戒した、A4-B1配置です。

 

このように、第一次戦術に特化した戦術を【カウンター(Counter-strats)】【アンチ(Anti-primary-strats)】などと呼びます。

 

 

しかし、防衛側が「パー」を出してくるなら、攻撃側は「チョキ」を出せばいいのです。

 

IEM Katowice 2020 Natus Vincere vs. FaZe

9ラウンド目

初手A4-B1配置のところにBファストを仕掛けています。

 

このカウンター配置に対して刺さる作戦のことを【第二次戦術(Secondary-strats)】【アンチのアンチ】などと呼びます。

 

 

名前がややこしいかもしれませんが、ほとんどのマップでは第一次戦術がA攻めで、第二次戦術がB攻めだと覚えれば結構です。

(VALORANTのマップは特殊で、Cサイトやワープがあったりと基本から逸脱したマップが多く、加えてエージェントの組み合わせなどもあるので一概には言えませんが)

 

  

Sentinels の実践例

 

では、VALORANTでは実際にこの作戦の組み立てがどのように行われているのか、アメリカ大会『PAX Arena Invitational』で優勝した Sentinels のとある試合を取り上げて紐解いていきましょう。

マップはスプリットです。

 

第一段階 作戦で会話

 

PAX Arena Invitational Sentinels vs Gen.G [SPLIT]

3ラウンド目(1stバイラウンド)

防衛側の初手配置がA1-ミッド2-B2の中、Aファストを仕掛けて見事勝利します。

 

試合序盤に情報を取ることなくAファストを行うということは、攻撃側(Sentinels)にとってこのAファストは第一次戦術です。

つまり、「Aファストに対抗できるように、初手A側を薄くするなよ?」「初動A2にしとけよ?」と相手と暗に会話しているのです。

 

 

4ラウンド目(2ndバイラウンド)

防衛側は前ラウンドの結果を受けて、このラウンドではA2配置を行い、レイズがAランプ前目で積極的エリア確保し、Aファストではないことを確認します。

そんな中、攻撃側は1人しかいないBサイトに対してファスト(第二次戦術)を仕掛け、見事勝利を収めるのです。

 

 

第二段階 情報取り

 

攻撃側が第一次戦術(Aファスト)と第二次戦術(Bファスト)も見せたなら、防衛側 Gen.G は攻撃側 Sentinels の作戦に対して特化した配置(=スタンダード配置)を取ることが予想されます。

ゆえに、今後は第一次・第二次戦術共に刺さらない可能性が出てきます。

 

よって、次に攻撃側は防衛側のスタンダード配置に対して刺さる作戦は何かを探る必要があります。

つまりここでようやく情報取りを行うのです。

 

6ラウンド目(3rdバイラウンド) 

Aファストと見せかけてのAランプ取りです。

(スパイクの位置から考えて、Aファストではない)

 

この作戦は情報を取るためのAランプ取りであって、Aへ攻めるためのAランプ取りではないです。

勘違いしてはいけないのが、情報取りなしのファストは決してじゃんけんではありません!

敵の基本的な初動配置(=スタンダード配置)を威力偵察できる上に、こちらがファストを仕掛けた際のカウンターは何かまで知ることができるので、失敗したとしても得られる情報は多いです。

 

 

閑話休題

このラウンドによって、防衛側による第一次戦術(Aファスト)のカウンターはレイズがブームボットでA前目を確認 + ペイント弾で威圧してくることだと分かりました。

 

つまり、人数をかけての積極的エリア確保を掛けてくるわけではないです。

対策として、非常に消極的な部類に入ると思います(個人的な感想)

 

ゆえに、Aランプは簡単に取れそうである(=第一次戦術が刺せる状態である)ことが判明します。

この大きな情報は後々調理していくこととなります...

 

 

加えて、防衛側はAサイトが取られていないのにも関わらず、Bからの寄りが非常に早かったですね。

(攻撃側は、セージ以外の4人をA側にて視認している)

 

ここで、もし敵の寄りがなぜ早かったのかを理解することができれば、敵の傾向を掌握することができ、やりたい作戦を押し付けることができるでしょう。

 

寄りが早い理由として、大まかに以下の3パターンのどれかが考えられます。

  1. 初手にBが取られて、Bがないのが確定されていた(積極的エリア確保)
  2. Aランプが取られたのを見て、Bメインを取られた(消極的エリア確保)
  3. 単に寄るのが早いだけ

 

今後のラウンドは、Gen.G は以上のどれであるかの傾向を特定するために情報取りを行います。 

 

8ラウンド目(4thバイラウンド) 

以前と同様に、情報取りのAランプ取りです。

前ラウンドと違う点は、「①B側の積極的エリア確保」があるかどうかをセージが確認している点です。

 

Aランプが取れた後は、オーメンがダークカバーを使ってA攻めができる環境を作るのですが、その状態でもセージはまだB側に残り続け、Bへゆっくり攻めて「②B側の消極的エリア確保」がないことを確認しています。

この時、Bメインは完全にクリアであることと、ミッドでセージのバリアオーブとスロウオーブを視認します。

 

つまり、A側で何を行おうが関係なく、B側はエリア確保を行なってこない(=サイト引き目で守っている)ことが判明します。

 

つまり、マップコントロールで敵を奥に追い込めてからのB攻めがよく刺さる状況の配置なのです。

f:id:amboxambo:20200726040344j:plain

f:id:amboxambo:20200726040823j:plain

この得た情報も後々活用していくので覚えておいてください。

 

 

このように、敵にわざと主体性を与え、情報を掴むために敗北もいとわないラウンドのことを【捨てラウンド】と言います。

 

もしこのラウンドでAフェイクBという作戦を刺したかったなら、Bへ切り返す過程で歩く必要はないですよね。

なぜなら、Aで釣れてるうちにBへ攻めないといけないからです。

 

 

CSGOにおける会話と捨てラウンドについて考察した、私の過去記事

amboxambo.hatenablog.com

約6500字

 

amboxambo.hatenablog.com

約9000字

 

 

第三段階 得た情報の調理

 

ここで負けてしまったことで、次はエコを挟むことを余儀なくされるのですが、このエコラウンドは捨てるのではなく、ここでようやく第一次戦術をぶつけることで勝利を狙うのです。

 

9ラウンド目(エコラウンド) 

見事、第一次戦術のA攻めは成功させるものの、初手Aランプ取りは失敗してしまいます。

なぜなら、初動で毎回Aランプを取っていたため、敵はそのカウンターとして多くの人員を掛けてくるようになったのです。

 

つまり、これ以降は第一次戦術が刺さらない可能性が高いです。

 

 

このように、実際の試合では第一次戦術も第二次戦術も刺せない状況が多いです。

そこで新たに情報取りのスタンダードやマップコントロールを行い、この敵のみに刺さる特定の第三次戦術を探す必要があります。

その作戦のことを具体的にオプティマム(Optimum-strats)】【ネクサス(Nexus-strats)】などと呼びます。第三次戦術ちゃうの? なんで?

 

この試合の場合は、マップコントロールからのB攻めがオプティマです。

つまり、後の残ったラウンドは対策されるまでB攻めを続けるだけの簡単なお仕事です。

 

10ラウンド目(5thバイラウンド) 

Aに全くアプローチをかけないB挟みです。

 

12ラウンド目(6thバイラウンド) 

今度はBメインを経由しない、シンプルなBアパート攻めです。

 

 

まとめ

 

ここまで長く述べてきましたが、この試合の指揮構成をまとめると、以下のように簡略化して表せます。

  1. 第一次戦術
  2. 第二次戦術
  3. 情報取りが目的のマップコントロール
  4. 第一次戦術
  5. オプティマムが目的のマップコントロール

こうして見るとシンプルですよね。

 

 

いきなり第一次戦術をボンッ! とぶつけるのもテーマとして面白いのですが、大抵の場合、攻撃側はリスクを避けるためにオプティマを探すところから試合が始まります。

では次の章では、どのように情報を得て作戦を組み立てるのかを述べていきたいと思います。

 

次 スタンダードの組み立て 

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

 

この記事は、Riot Gamesが公式承認するものではなく、Riot Games又はVALORANTの製作・管理に正式に関与したいかなる者の見解・意見に基づくものではありません。VALORANT及びRiot Gamesは、Riot Games, Inc.の商標又は登録商標です。VALORANT ©︎ Riot Games, Inc.