本連載記事は旧コンテンツです。
新バージョンを下記にて連載予定です。
これの続き
3種類の守り方
③リテイク配置
【リテイク配置】は、状況に応じてサイトを明け渡し、生き残っている人全員でまとまってサイトを取り返す配置です。
特に4対4、3対3などの人数が削れた状況では、防衛側はどこかのサイトを1人にする必要が生じるため、そこに攻め込まれると守り切ることはできません。
そこで、1人で守っている人は戦うのではなく、味方の援護を待ってからサイトを取り返す手法が使われることがあります。
この少人数戦の状況について、Laz氏(2020)は「できるだけカバーでキル取り返せるように」するため、「できるだけ固まって同じタイミングで攻めること」が重要*1だと述べています。
また、akioni氏(2017)は少人数戦の基本について以下のように論じています。
CT側は死なないように安全な場所から情報を集める。敵を見つけたら仲間と合流してから戦いに行く。もし敵が自分を殺しに来てるなら可能な限り逃げる。逃げ切れないと思うなら戦う。フリーキルだけはされないようにする。*2
※筆者注釈:CT=防衛側
つまり、ラウンドが終わりに近付くにつれて、防衛側は死なないこと・生き残ることが非常に重要なのです。
積極的リテイク配置
【積極的リテイク配置】は、既にどこか前目が取れている状況(積極的エリア確保が完了)で、そのエリアをキープしつつサイトを明け渡すことです。
T1 x Nerd Street Gamers Showdown FaZe vs. Immortals [BIND]
11ラウンド目 セージ
防衛側セージはBサイトに一旦敵を通し、 Bショートのレイズを先にキルします。
そして挟まれる心配がなくなった後に、Aサイトの味方と一緒にBリテイクするのです。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Crazy Raccoon vs Sunsister Rapid [BIND]
16ラウンド目
オウルドローンでBショートに敵がいるのを視認したため、ブリムストーンはAシャワーを取りに行きます。
その後、Aへワープした音を聞いたため、インセンディアリーとスカイスモークで足止めを行います。
結果、A挟みを回避することができ、非常に有利な状況でリテイクに臨めました。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [ASCENT]
6ラウンド目
ラストの攻撃側サイファーがミッドにいることが確定し、2対1の状況下。
防衛側は予期しない1対1の状況を作りたくないため、スパイクが設置されるまでAメインとBメインをキープし続けます。
設置された後は、人数差有利を生かすためツーマンセルで行動しました。
CSGOの例
FACEIT Major: London 2018 Astralis vs. FaZe Clan [Mirage]
9ラウンド目
初手マップコントロールで積極的エリア確保を行い、Aサイトの3つの侵入口のうち2つを封殺します。
その後、Bが削れて4対4になったため、A側は積極的リテイク配置でリテイクに臨みました。
消極的リテイク配置
【消極的リテイク配置】は最終手段です。
防衛側が広くエリアを取れておらず、かと言って今から消極的エリア確保を行うのは間に合わないといった場合に選択肢として挙がります。
しかし、同じ場所から味方と突撃できるため人数で押せる、特定のエリアを確保し続けられるといったメリットはあります。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL LAG Gaming vs. Reject [BIND]
2ラウンド目
防衛側セージの超人離れしたエイム(余談ですが、このプレイを【インヒューマン・リアクション(Inhuman Reactions)】と呼びます)によって勝利したと思いがちですが、本質はそこではなく、
①防衛側セージが戦闘せず生き伸びることでエルボーを抑え続け
②攻撃側が勝ち確設置ではなく中設置せざるを得ない状況を作り
③攻撃側のポジションをスパイクが監視できるサイト内に限定させたこと
以上の3点です。
このプレイは、消極的リテイク配置の成功例として後世に受け継がれる圧巻のプレイでしょう。
CSGOの例
BLAST Premier Spring Series 2020 Astralis vs. Natus Vincere [Inferno]
22ラウンド目
初手A2-B3配置でAファストを行われてしまったため、A側の選手はサイトから逃げて消極的リテイク配置を取ることを余儀なくされます。
結果、5人固まってリテイクできたことで、互いにカバーし合うことができました。
アグレッションの度合い
リテイク配置の項で死なないことが大切と述べましたが、他にも死なないことが最重要な場面があるため、番外編として紹介しておきます。
防衛のセオリーとしてまず心がけておくべきことは、チームメイト全員で守ることです。
たとえばスプリットで、防衛側がアグレッションによって思いがけずミッドとBが取れてしまった場合
Bサイトで守っていたプレイヤーはBにいる意味がないので、Aへ配置転換することでしょう。
ここで爆破FPS初心者は大きな間違いを起こしがちなのですが、ミッド・Bを詰めているプレイヤーがそのままA側まで詰めて死んでしまうことがよく見られます。
なぜこれが大きな間違いなのか説明すると、そもそもミッドとBの前目を取ることができて、どういった利点が生まれたかと言うと
- ミッドとBが完全にクリアなので、敵の本命はAだと確定できた
- Aを4人で迎え撃てる状況を作れた
以上の2点です。
しかし、詰めているプレイヤーが死んでしまうことによって、この有利状況を自ら壊してしまうのです。
B側の情報がなくなったため、敵は今からBへ切り返す可能性があります。
よって、防衛側はBもケアするためにAからBへ1〜2人ほど配置転換する必要が生じます。
このように、5人に対して4人で迎え撃てる優勢状況だったのに、詰めて死んだことで劣勢状況に変動してしまうのです。
勘違いしてはいけないのが、詰めることは悪くないです。
詰めによって敵の統率を乱したり、作戦を破綻できるためです。
絶対にダメなのが死ぬことです。
正しいプッシュ
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [BIND]
5ラウンド目
シャワーの攻防が起こるものの、攻撃側のアクションが無くなったため、セージがシャワーをプッシュします。
ショートの裏を取った後は、Aサイトまで引き返して味方をカバーしています。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL LAG Gaming vs. Reject [BIND]
10ラウンド目
B側を大きく裏取りしていたオーメンは、1キル取った後は生き長らえることで、敵にBへ行く選択肢を与えませんでした。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL BAKEMON vs. Sengoku Gaming [HAVEN]
2ラウンド目
ソーヴァが死ななかったおかげで、C3にし続けることができました。
死ぬのはダメとは言いつつも、敵が切り返してきて撃ち合いになった場合はこの限りではありません。
GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020 Crazy Raccoon vs. Way Myriad [ASCENT]
23ラウンド目
最初の実況解説好き
バリアオーブで足止めされた攻撃側は臨機応変にBへ切り返します。
しかし、残り時間が少なかったため、道中のエリアを丁寧にクリアリングする余裕がなく、このように前目のポジションで守っていたオーメンに狩られてしまいました。
CSGOの例
ELEAGUE Major Boston 2018 Gambit vs. SK Gaming [Overpass]
3ラウンド目
初手A1-B4配置で、Aの選手(fer)は敵がAに多いことを確認したため、B側を4人で消極的エリア確保します。
その後、Aのプレイヤーは死んでしまったことで、A2-B2へ配置転換を行い、Aは消極的リテイク配置、Bは積極的リテイク配置を取ります。
結果、Bの選手(TACO)は裏詰めをせずに敵のスポーンで待ち続けていたことで、敵のローテーションを狩ることができ、このラウンドの勝利を決定付けました。
この件に関しては、悪い例を見るのも良い学習になると思います。
配置の意思統一ができていなかったため敗北した例
StarLadder Major 2019 Astralis vs. Liquid [Vertigo]
21ラウンド目
4対4。Bを完全に制圧できて、A確定状態。A3-裏詰め1配置。
残り20秒で攻撃側は今A攻めするしかないという状態で、裏詰めの選手(Magisk)とAサイトの選手(gla1ve)がピークして死亡します。
もし、
- 設置させてリテイクで挟み込む形を取りたかったのなら、先走った選手(Magisk、gla1ve)がアグレッシブなプレイを行ったのは間違い
- 設置させたくなかったのなら、サイト後ろ目の選手(device、Xyp9x)がホールドし続けるのは間違い
チームメイト全員で勝利目標・配置を統一できていなかった結果、敗北したと言えるでしょう。
ちなみに、ここで裏詰めをした Magisk は、以前に消極的エリア確保による裏詰めで大成功を収めており*3、その功績からこのラウンドでも図に乗ってしまった説が濃厚とされています。
予想される反論
Q. gla1ve は Magisk のカバーをしただけでは?
A. いや、明らかにgla1veはすぐにピークできる場所にいなかったです。えびまよ氏(2017)は「味方が撃ち合いをはじめたときにすぐにカバーができない」状態はカバーではない*4と指摘しています。彼はわざわざ青い箱の上に乗ってサイトへ顔を出しました。統率の取れていないプレイだったと言えるでしょう。
この試合について更に詳細に考察した、私の過去記事
このように、裏詰めの選手がしくじってしまうと、それに乗じてボロボロと配置が崩れ落ちてしまいます。
この点で大事なのは、コミュニケーションです。
特に少人数戦では、リーダーが指示するよりも生存している人同士がコミュニケーションを取ってプレイする場合が圧倒的に多いです。
チームメイト同士が「そんなに詰める意味ある? もっと引いたほうがいいんじゃない?」「こっち詰めようか?」「ボット入れるから一緒に詰めよ」など、各々のプレイについて提案(批判ではない)が言い合えるようになると、防衛側としての連携力が上がることでしょう。
ちなみに上で例を挙げたチームは、2018〜19年にかけて絶対王者とされていたチームです。
世界トップレベルでもこのようなミスを犯すのだから、我々素人なんかはもっと気を付けましょう。(小並感)
防衛まとめ
まとめると、防衛側では以下の2点が重要です。
- 情報取り→マップコントロールといった動きや、死なないことが大事
- 防衛側では、コミュニケーションを取ることがより重要
爆破FPS初心者が陥りがちなミスとして、サイト守りのプレイヤーがいつまでもサイト内にこもり続けることが挙げられます。
状況に応じて自分のポジションを スタンダード ↔︎ エリア取り ↔︎ リテイク と柔軟に変化させることができれば、ようやく初心者卒業と言えるのではないでしょうか。
次 作戦の組み立て方
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