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【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第12章- フェイク・ルーズスタイルの組み立て

 

本連載記事は旧コンテンツです。

新バージョンを下記にて連載予定です。

amboxambo.hatenablog.com

 

これの続き

amboxambo.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

TSM式の組み立て

 

4章で述べた byrrice氏(2017)の引用をもう一度見てみましょう。

Defaults vary from map to map, but the general concept is the same. Defaults at their core are about gathering relevant info, holding for CT aggression(中略)and maintaining a presence around the map.

クソ翻訳:スタンダードはマップによって異なりますが、一般的な概念は同じです。どのマップでも核となるスタンダードは、情報収集、防衛側の侵攻への対応、(中略)マップのあちこちで存在感を保持し続けることです。

 

「情報収集」「防衛側の侵攻への対応」については述べてきましたが、「マップのあちこちで存在感を保持し続けること」=TSM式のスタンダードの本質についてはまだ触れてませんでした。

 

よってこの章では、日本大会『RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL』で優勝した Absolute JUPITER の作戦の組み立てから、存在感の正体について述べたいと思います。

 

 

Absolute JUPITER の実践例

 

6章の組み立て式フェイクで述べた  A挟みフェイクBの試合をより詳細に掘り下げてみます。

 

第一段階 作戦で会話

 

RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [ASCENT]

4ラウンド目(1stバイラウンド)

第一次戦術であるAファストです。

ハンターズヒューリーでAショートをクリアリングすることで、敵の積極的エリア確保を許しませんでした。

 

このラウンドで相手にAショートを印象付けさせ、次のラウンドに臨みます。

 

5ラウンド目(アンチエコラウンド)

Aショート攻め切り返しBです。(実際に攻めているのでフェイクではない)

人数が多そうなのが分かったため、臨機応変にBへ切り返しました。

 

1つ特筆すべきことがあって、それはAショートを攻めるためにサイファーが前もってガーデンにサイバーケージを投げていることです。

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つまり、ミッドを取った時点でいつでもA挟みを実行することができる状況をサイファーが作っていたのです。

 

 

投げ方例

①Aロングの箱上に乗る

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②白い雲と黒い雲が交わっている周辺(適当でいい。筆者は白い雲の右上頂点と決めてる)にクロスヘアを合わせる

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③ここに落ちる

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④あとは好きなタイミングで起動させるだけ

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5ラウンド目では、このケージ単なるAショート攻めのために用いられましたが、6ラウンド目ではAに注目を集めさせる要素、つまりAフェイクBの材料として用いられます。

  

6ラウンド目(2ndバイラウンド)

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第二次戦術のB攻めです。

Aに注目を集めさせるため、フェイクとして1:27〜1:21にAショートのケージを展開させていますが、残念ながらこのフェイクが刺さることはなかったです。

 

この作戦が失敗した要因として、このケージを視認した人が誰もいなかったことが挙げられます。

これは神視点だから分かることではなく、防衛側スポーンにジェットとオーメンがいたことから鑑みても、おそらく攻撃側はAショートに誰もいなかったと情報を得ることができたでしょう。

(スポーン2なら、他の2人はAサイト1-Bサイト1と容易に想像できるため、Aショートのケージを視認できた人はいないと予想できる)

 

攻撃側 JUPITER の心理として、初動にAショートが積極的エリア確保で取られているため、

第一次戦術が警戒されている → じゃあ第二次戦術が刺さりそう

と思考するのは当然でしょう。

 

しかし、防衛側は巧みに守備位置を変えることで配置の情報を与えず、ラウンドの主導権を攻撃側に譲らないのです。

こういった柔軟な守り方をする敵が相手だと、情報が落ちることがない、もしくは得た情報が意味を為さないため、スタンダードでの情報取りはほぼ無意味です。

 

つまり、第一次・第二次戦術が刺さるのかや、この敵に対するオプティマムは何かなどと敵の穴を探しているようでは勝利を掴むことができません。

敵の配置に穴を無理矢理こじ開ける必要があるのです。

 

こういった相手に対して特に有効的な戦術が、今まで述べ切れていなかったフェイクルーズスタイルなのです。

 

 

 

さて、存在感の話に戻ります。

以上のケージが毎回準備されているということは、サイファーがAロングにいるとアピールしているようなものです。

 

つまり、サイファーがAロングにいる」という情報を相手に渡してしまっているのです。

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逆に言えば、もしケージが飛んでこなければ、防衛側にサイファーがいない可能性が高いと容易に推測されてしまうのです。

 

7ラウンド目(3rdバイラウンド)

B挟みのためのマップコントロールです。

 

このラウンドではサイファーはBで待機し、ガーデンにケージを使わなかった=存在感を出さなかったことで、Aロングはクリアであることを相手に暗に伝えているのです。

 

そして、ミッドに留まり続けることで相手の消極的エリア確保を促し、オーメンのA側からの過度なアグレッションを誘い出すことができました。

 

このように、エリア確保の後にサイトへ攻めず留まり続けることを【ホールド(Hold)】と呼びます。

エリアをホールドし続けることで相手のミスを誘い、キルや情報を得るのです。

 

CSGOの例

ESL One: Road to Rio G2 vs. FaZe [Mirage]

38ラウンド目

Aに侵入できるものの、Aサイトのミッド側(アセントで例えるとガーデン)でホールドし続けます。

防衛側の kennyS という選手に立て続けにキルを取られてしまいますが、忍耐強く、辛抱強く敵のミスを待ち続けています。

 

つまりホールドはルーズスタイルの一種です。

 

 

アセントの話に戻ります。

オーメン=A側のキルが発生したということは、当然A側の配置に穴が開いたということです。

 

しかし、ここで安直にAへ攻めてはいけません!

なぜなら、この瞬間にAへ攻めると、防衛側は穴の空いた配置をカバーをしようと一気にAへ寄ってしまうためです。

かいつまんで述べれば、BからAに大きな寄りが発生するため、結果的にBに大きな穴が空くのです!

 

よって、攻撃側はここでAショートにアクションをかけ、敵の注目をAに集中させた瞬間にB挟みを実行して勝利を収めるのです。

TSM式スタンダード、ルーズスタイル、フェイク等を織り交ぜ、敵を思いのまま揺さぶらせた見事なラウンドと言えるでしょう。

 

 

しかし、続く2ラウンドでは、明快な作戦を講じることができなかったため敗北します。

 

8ラウンド目(4thバイラウンド)

第二次戦術であるストレートなB攻めです。

何かを読んでのB攻めだと思うのですが、防衛側のジェットの位置がラウンドによって不定であるため、このようにB2配置に対してB攻めを行ってしまい、壊滅させられてしまいました。

 

9ラウンド目(エコラウンド)

第一次戦術であるA挟みファストです。

これも相手のオーメンの位置がラウンドによって不定であるため、Aショート2配置に対してAショート攻めを行ってしまい、敗北します。

 

このように、ラウンド毎に配置が予想できない相手に対してTSM式スタンダード、フェイク、ルーズスタイルが絡まない戦術がいかに効果が薄いのか実感できるでしょうか。

 

 

そして次はいよいよTSM式スタンダードからのフェイクを刺す時が来るのです。

 

 

第二段階 敵を翻弄させる大きな作戦

 

10ラウンド目(5thバイラウンド)

以前にも述べた、Aショート攻め切り返しBです。

 

まず初手にリーアスカイスモークハンターズフューリーを使ったことで、4ラウンド目のA挟みファストを彷彿とさせます。

そしてAショートにリーアケージを使うことで、「敵がAに入ったかもしれない!」「Aショートが見えない!」という状況を作るのです。

 

ガーデンにいるセージ目線

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バリアオーブの上に乗っているのにも関わらず、Aショートの様子を伺うことができません。

ここでセージが「Aショートからサイトに流れたかも。ケージで見えない」という報告をすることで、Aショートに「幽霊」が生まれ*1、防衛側の注目が一気にAへ向いている間にB攻めを行うのです。

 

この作戦を成功させることができたなら、あとは敵と会話するだけです。

 

 

第三段階 作戦で会話

 

防衛側目線としては、Aサイトを守り切る殲滅配置なのかリテイク配置なのかを統一できなかったため敵のフェイク行為に揺さぶられてしまったことが敗因だと考えられます。

 

つまり防衛側の改善策として

  • 初動にA側で積極的エリア確保を行い、A側の積極的リテイク配置を完了させ、B側に人員を集中させる
  • 上の逆で、Bを取ってAを固める

以上の2パターンが考えられます。

 

 

対する攻撃側は、これらを阻止することで敵の配置を不完全なまま盤面固定させることができ、主導権を握れたことでようやくオプティマムを刺すことができるのです。

  

11ラウンド目(6thバイラウンド)

おそらく初動はA挟みを試みていたでしょうが、相手がスパイカメラを壊してAロングを取ってきたことを見て、すぐにBへ切り返しました。

 

ここで攻撃側ソーヴァは防衛側オーメンとAロングの攻防を繰り広げ、Aで存在感を出し続けたことでAクリアという情報を相手に与えず、最終局面まで相手にB攻めの可能性を示唆させませんでした。

(その証拠として、防衛側ブリムストーンオービタルストライクを躊躇している)

 

これは推測ですが、もしこのラウンドで防衛側がAロングを取ってこなかったりBメインを取ってきたならば、攻撃側はおそらくAファストを実行していたと思います。

 

 

そして最後のラウンドでは、敵がカウンターとして前目に詰めてくれるようになったため、それらの対策を全て無に帰す最強の戦術「ルーズスタイル」が火を吹くのです。

 

12ラウンド目(7thバイラウンド)

レイナは決め撃ちで対角のオペレータージェットを仕留め、その勢いのままBへ突入しました。

 

 

この試合の指揮構想をまとめると、以下のように表せます。

  • 第一次戦術
  • 第二次戦術が目的のマップコントロール
  • ルーズスタイルが目的のマップコントロール
  • 第二次戦術
  • 第一次戦術
  • フェイクが目的のマップコントロール
  • オプティマ
  • ルーズスタイル 

 

10、11章で述べた例よりも難解ですね。

まさに5種類全ての戦術を織り交ぜ、目的に応じて最適な作戦を立案できている素晴らしい指揮だと言えるでしょう。

 

 

 

次 防衛側の役割と作戦

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