【BLAST Pro Series 2019】Astralis は何故 Liquid に勝てたのか -第3章-【Inferno】
これの続き
カウンターテロリスト
テロリストで押し付けたことの逆と考えると、答えは分かりやすいです。
バナナ取り
Aは当然3人で守り切れないので、A4-B1配置にしたいです。
そのためには相手のバナナ取りに抗い、バナナをホールドする必要があります。
つまり、バナナを長時間ホールドできるほど、こちらはA4にできる機会が増え、相手はAにしか行けなくなります。
統計を取ったところ、CTにおいて Astralis は Liquid に比べてバナナをホールドした時間がかなり長いことが分かりました。
Astralis が行なっていた、バナナを長時間ホールドする工夫として
①ラウンド途中からバナナ取りを行う
②バナナに侵入してくる相手を確実に殲滅する
この2点が挙げられます。
①ラウンド途中からバナナ取りを行う
そのままの意味です。
TRはバナナを取った後、本命に行くのがセオリーです。
そこで、バナナを取らせるのを遅延させることによって、相手にフェイクさせたりチマチマさせる時間を奪うのです。
準決勝5ラウンド目
まず初手に、Aサブの dupreeh に投げ物を使い切ってもらいます。
そして彼が投げたスモークが晴れる 1:30過ぎに、B係の Xyp9x と gla1ve が、デルタをスモークで塞ぎ、塀の手前と奥を燃やすのです。(誰もが知っている古典的な手法)
これだけでバナナのホールド時間が46秒でした。
Liquid が準決勝においてバナナをホールドした平均時間は19秒、最長が31秒だったことと比べると、このラウンドがいかにホールド時間が長かったのか分かります。
準決勝11ラウンド目
アンチエコ。
初手に投げ物は一切使わず、敵の気配がないのを確認した後、1:40にバナナコントロールを始めます。
また、薪にネードスタックすることによって、潜んでいる敵を殲滅しようとしています。
②バナナに侵入してくる相手を殲滅する
相手が樽を燃やしてくるのを読んで、初手にCTベースから消火するスモークを投げます。
そしてAからデルタ、Bから薪を燃やして、安全な1stピック環境を作ります。
準決勝8ラウンド目
決勝12ラウンド目
投げ方メモ
他には、デルタやバナナ入り口の3箇所を燃やし、相手を完全に焼却させる方法も見受けられました。
しかし Xyp9x が事故ってたので、今大会では1回しか見れませんでした。
準決勝6ラウンド目
相手のバナナ取りに抗う手法としてポテンシャルは高いでしょう。
HEグレネードなどと合わせれば、非常に効果的だと思います。
①②複合 相手をバナナに誘い入れ、殲滅を狙う
バナナを取らせた上で、塀より手前をリテイクをします。
Astralis は作戦を隠すとはよく言いますが、その代表例です。
決勝のフルバイラウンド8つのうち、4ラウンドにおいてこの作戦を使用していました。
余談ですが、直近の大会「ESL Pro League Season 10 Finals」と「BLAST Pro Series 2019」の準決勝にて、それぞれ1回チラッと見せていました。ぶっ刺したりはしてないです。
決勝4ラウンド目
塀のスモークと Stewie2K が燃えたモロトフ
決勝6ラウンド目
投げ方メモ
再喝
決勝のフルバイラウンド8つのうち、この作戦を見せたラウンドは4つ。
そのうち Liquid が最終的にAに行ったラウンドは4つ全て。
Astralis の勝率は100%でした。
これらのことから、Aでどうこう抗うよりも、バナナを取らせないことの方が先決だということが分かります。
バナナまとめ
相手にバナナを取らせないために、
①ラウンド途中からバナナ取りを行う
②バナナに侵入してくる相手を確実に殲滅する
以上の2点を踏まえた作戦を遂行する必要がある。
AにAWPがある場合
バナナを取れたとは言えども、根本的な守り方を工夫しなければ Liquid の攻勢に耐えることができません。
Liquid は厄介なことに、セットプレイに加えマップコントロールも行ってくることがあります。
どちらも非常に強力です。
セットプレイ
決勝8ラウンド目
バナナを取った上での、標準的なAフルセットです。
セットスモークとマップコントロールの複合
準決勝4ラウンド目
①T字の取得
Twistzz のALスモーク、AL対角モロトフが起点となり、nitr0 のASフラッシュでT字から敵を完全に引かせます。
②ALの取得
nitr0 がA・B挟み用スモークを投げ、自らALをクリアリングします。
③サイトの取得
EliGE がミッドから砂場手前スモークを投げ、NAF がAS屋根下から砂場奥スモークを投げます。
このセットアップがなぜ強力なのか
フルセットの短所を思い出してください!
・本命なのがバレる
→投げ物をフル活用して侵攻を防がれてしまい、時間が稼がれる
Magisk の立ち回りと、Xyp9x の位置に注目して、もう一度、決勝8ラウンド目を見てください。
Magisk がやばい! となって投げ物を使ったのが 0:26。
この時点で Xyp9x はCTベースにいます。
モロトフが晴れ、Twistzz のフラッシュを起点に Liquid が侵攻を始めるのが 0:18。
この時には既に Xyp9x はAサイトにいます。
再喝
このように、フルセットは強ポジを潰せる反面、相手に反撃の準備と機会を与えてしまうのです。
ではセットスモークとマップコントロールの複合はなぜ強いのか
→反撃を許す暇なく、サイトの敵を各個撃破できるからです。
これを踏まえた上で、再び準決勝4ラウンド目を見てください。
Magisk、device がセットスモークを視認したのが 0:18。
サイトに一番槍 nitr0 が潜入したのが0:15。
この間、わずか3秒。
彼らは焼夷グレネードを持っていませんでしたが、もし投げていても全く間に合っていないでしょう。
つまりこの作戦において、砂場は全くの意味のない弱ポジと化し、サイト内に隠れようものならば、味方の誰からもカバーがもらえず死ぬのを待つしかないです。
Inferno において、砂場やサイト中は強ポジとして常識ですが、その常識が Liquid 相手には通用しなくなるのです。
絶対に頭に入れておくこと A側はT字で誰も死なずにAの引き守りで撃ち合いが理想 よくT字で撃ち合って死んでるチームいるけど、Aサイトやキャッスル、砂場のオブジェクトの数を利用せずに死ぬのもったいないぞ。
CSGOのマップに関する解説 - FPS爆破講座or雑記
つまり Liquid 相手に大事なのは、このASラインは絶対に放棄してはいけないということ。
で、Astralis が次の対策として、砂場の放棄とASラインの保持を行います。
そして数ラウンドに渡り、Aメイン守りの Magisk がAサブへと配置転換させます。
準決勝6ラウンド目
device が砂場セットスモークを横目に、ASラインを抑えています。
しかし相手はA挟みの戦術で、アサルトの本隊がASから来ることはありませんでした。
原因
初手に凝った作戦をして Xyp9x が事故死したため、A4-B1で守れず、ALを止めれなかった。
→じゃあ次は初手にバナナを確実に取り、すぐA4-B1にできるようにしよう。
準決勝8ラウンド目
初手A2-B3、バナナに AWP を置いて → A4-B1
まとめ
ASのラインは AWP で必ず抑えておきたい。
→でもALが取られては話にならないので、Aは4人で守りたい。
→A4にするために、バナナを初手に無犠牲で確実に取る作戦を持っておかないといけない。
Astralis が思い描く、A守りの最終形態(決勝11ラウンド目)
参考までに Liquid の配置
決勝21ラウンド目
決勝22ラウンド目
2チームを比べると、AWPer の位置が違って面白いですね。(小並感)
とは言いつつも、AWPがない時がありますよね?
そんな時の作戦も Astralis は用意しています。
AにAWPがない場合
詰めてくる敵をピック→引く→ピック
というAWPならではの強いムーブができないので、カバーとクロスファイアでゴリ押ししようという作戦です。
端的に言えば、T字で撃ち合いをします。
準決勝13ラウンド目
ボイラー前の花壇ブーストです。
単体ならフラッシュ1本で確定死するポジですが、他人のカバーがあればクリアリングされる前に相手を落とせる強ポジとなります。
決勝13ラウンド目
ザリガニ(って私は呼んでます)の使用です。
単体では死にポジですが、このラウンドのように dupreeh の釣りがあったり、燃やされなければ強いです。
燃やされるか燃やされないかは、正直運です。
祈りましょう。
相手がスモークを投げてくれたなら、スモーク前でブーストするのもありです。
ブーストの例
DreamHack Masters Malmö 2019 Team Vitality vs ENCE
決勝8ラウンド目
device と dupreeh の動きに注目してください。
スモークを炊いて、歩いて前に詰めたことを鑑みるに、ブーストもしくはリピークを試みようとしたのではないでしょうか。
残念ながら、Twistzz のモク抜きに阻まれてしまいましたが。
(常識的に考えるならこれはリピークの構えですが、Magisk がフラッシュを余らせていなかったので、私はブースト説を推します)
このようにラウンド途中で前線を上げるのは、AWP無しの状況では有用な手段の1つでしょう。
決勝4ラウンド目
T字でのファーストコンタクトで勝利することができれば、ミッドに敗残兵が残ります。
T字で撃ち合う配置を取っていたならば、この敗残兵を逃すことなく刈り取ることができます。
このラウンドでは、1:09 の nitr0 のデスが無ければ、gla1ve が1人で守っているBに2人で攻め込まれ、ラウンドの勝敗が危うかったことでしょう。
まとめ
AWP がAにいない場合は、T字で本戦闘を起こす配置を取る。
エコ・調整バイラウンド
ピストル負ける
→フォースバイ負ける
→フルエコ
この状況ならば、ラウンドを取ることよりも相手の金を削るのが最優先なので、スタックしましょう。
準決勝3ラウンド目
フルエコでAKが1本セーブできたので、非常に良い戦果だったと言えます。
また、Inferno はマップ構造的に直角が多いため、ゼウスを積極的に使っていきましょう!
準決勝3ラウンド目
決勝20ラウンド目
ESL Pro League Season 9 Finals Liquid vs. G2
調整バイラウンドでは勝ちにいきましょう!
失ってもいい武器・弱い武器を持っているからこそ、思い切った行動に出てみましょう。
Liquid 相手にはアパートを活用していきましょう。
アパートはあんまり存在価値ねえ、T字を取るのに意味を成す場所+CATで永久に釣るのが強いポジション。
CSGOのマップに関する解説 - FPS爆破講座or雑記
TR目線では、アパートの存在価値は皆無です。
なぜなら、バナナと違って取らなくてもサイトへ行けるからです。
しかし、CTにとっては敵陣の穴を突くことができる絶好のポジションへと変貌するのです。
準決勝7ラウンド目
CTがエコやSMGバイだと、リスクを恐れないアパートの前目配置が予想できるので、TRは被害を出してまで戦略的価値のないアパートを取りに行く必要がないのです。
例えばこういった事例。
ESL Pro League Season 10: Finals Liquid vs Fnatic
Twistzz がアパートへ侵攻していれば、JW と交通事故を起こしたことでしょう。
しかし、Twistzz がアパートを取ったのにも関わらず、大事故が起こったラウンドも存在します。
13秒前にはCATに誰もいなかったことを確認しているのも皮肉なことです。
また、アパートはラウンド終盤にてその真価を発揮することもあります。
決勝23ラウンド目
場所の考え方は、Mirage の宮殿と同じですね。
・TRは取ってもあまり意味がない
・CTは取っておくと終盤で有利
宮殿を抑えていた方がラウンド終盤で有利になった例
FACEIT Major: London 2018 Astralis vs FaZe Clan
本来は武器差がありすぎるので、このように全く刺さらないのが普通です。
決勝14ラウンド目
しかし、タイミングさえ噛み合ってしまえば、フルバイ相手でも戦局を覆すポテンシャルがあります。
まとめ
アサルトや AWP を持っている場合は、クロスファイアを組んだりサイトで死ぬまで戦うのが基本でしたが、弱い武器を持っている場合は1キル0デス、もしくは2キル以上を取るような一発逆転の立ち回りを狙いなさい!!
セットプレイ対策
上で再三述べているので、特筆すべきではないかなと思ったのですが、情報が散乱していたので、整理する意味でも書き記しておきます。
再喝
セットプレイとはロールが分かれているプレーのこと。
サポーターのスモークやフラッシュを起点に、エントリフラッガーがピークを行うプレーを指します。
スモークを複数投げることだけがセットプレーではないです。
これの対策
①最前線にAWPを配置する
ピック→引く→ピックといったAWPならではの強いムーブを活かすため
Aセット対策
準決勝6ラウンド目
決勝11ラウンド目
決勝15ラウンド目
AはASラインを抑えましょう。
A挟みを警戒しなければいけない場合のみ、サイト中やキャッスルに入りましょう。
そもそもA挟みを警戒する時点で戦術的敗北なので、誰かがK/Dを取り返してくれるファインプレーをしてくれることを祈りましょう。
Bセット対策 決勝10ラウンド目
Bセットではバナナからしか敵が来ないので、この fisker−土嚢ラインを抑えるのは非常に強力です。
AWPがない場合は?
A:T字守り or アパート守り
B:バナナリテイク or カウンタープレイ
②投げ物を使う
Aセット
時間稼ぎができる焼夷グレネードが強力です。
フラッシュ→ピークなどのカウンタープレイを行うよりも、ALやCTベースの味方に戦闘に参加してもらうため、まずは時間稼ぎすることが大事です。
A守りの人はHEグレネードを使う機会が希薄なので、この最終局面まで残しておいても良いでしょう。
焼夷グレネードで時間稼ぎを行なった例
決勝8ラウンド目
決勝11ラウンド目
Bセット
バナナ取りで焼夷グレネード・HEグレネードを残していないことが多いので、時間稼ぎではなく殲滅のカウンタープレイが行われることが多いです。
BのリテイクはAに比べたら容易なので、気にせず死にましょう。
具体的にはスモークを炊き、fisker にフラッシュを入れてピークし、モク抜きを行います。
このカウンタープレイを行う場合は、KeNNy、HeatoN、コイルなどのサイト奥目よりも、CTや SpawN といったサイト入り口に陣取りましょう。
準決勝29ラウンド目 Stewie2K の動き
決勝10ラウンド目 Xyp9x の動き
1:03、1:01 の gla1ve のように、CT遮断スモークをモク抜きするのも強力でしょう。
Astralis が行う戦術 まとめ
TR
・バナナは絶対取ろう
・バナナ取った上でAL取るのも強い
・フェイクは全力
・フルセットは条件が合った時のみ
CT
・A4で守るために、バナナ取りの作戦は無限に持っておこう
・AWPを持っていない時はT字で守ろう
・エコの時はアパートで守ろう
・セットプレイを崩す作戦を持っておこう
こんなものかな。
何か見落としてることがあったり、追記することがあればコメントまでお願いします。
続き