【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第6章- フェイク
本連載記事は旧コンテンツです。
新バージョンを下記にて連載予定です。
これの続き
5種類の攻め方
④フェイク
【フェイク(Fake)】とは敵を揺さ振ることです。
言葉で表すと、「AじゃなくてB」「AじゃなくてB、じゃなくてA」「AじゃなくてA」などです。意味わからないですね。
フェイクを効果的に使うことで、例えば
- 敵の意識を逆側のサイトへ向けさせ、本命をより少ない犠牲で取る
- サイト内で守っていた敵が逆側のサイトへ配置転換している無防備な瞬間を狙ってキルする
- バリアオーブやナノスワームなどの守備において重要な足止め系アビリティを無駄撃ちさせることができる
といった状況を発生させることができます。
それぞれ例を見ていきましょう。
1. CフェイクA
VCT 2021: Japan Stage 1 Challengers 1 Absolute JUPITER vs. Lag Gaming [HAVEN]
7ラウンド目
初めはおそらく本命Bでしたが、ブリーチのULTで止められてしまい、臨機応変に本命を変更させます。
攻めの第二プランを模索する中、Cサイトで攻撃側オーメンが防衛側ジェットをキルし、そのままCに対してダークカバーとリコンボルトを使ってCフェイクを行います。
結果、A守りのサイファーがAサイトを明け渡したタイミングでA攻めを行うことに成功し、防衛側は4人生存にも関わらず武器セーブを余儀なくされました。
2. BフェイクA
eGG esports challenge G-Tune VALORANT INVITATIONAL Absolute JUPITER vs. FAV gaming [ASCENT]
11ラウンド目
攻撃側レイズがB側でキルを獲得し、オーメンのダークカバーとパラノイアでBに対して圧力を掛けます。
結果、A側の防衛側ブリムストーンが配置転換した瞬間を、攻撃側フェニックスがキルすることができ、A側を確保することができました。
この作戦の関連戦術
3. AフェイクA
Valorant Esports Tournament T1 vs. Code7 [HAVEN]
18ラウンド目
Aに圧をかけ、相手にバリアオーブとスロウオーブを使わせた後、一旦引き返します。
その後、ミッドのブリムストーンを撃破したことで、相手に「Cへ引き返している」という情報が伝わってしまったため、再びA攻めを行います。
結果、Aサイトを無犠牲で取ることができ、防衛側は4人生存にも関わらず武器セーブを余儀なくされました。
CSGOの例
BじゃなくてA
BLAST Pro Series Bahrain 2019 Astralis vs. Liquid [Inferno]
26ラウンド目
B側のエリア取り + Bセットで防衛側の配置がA2-B2からA1-B3になった瞬間にA攻めを行います。
AじゃなくてA
ESL One Cologne 2019 Natus Vincere vs. Liquid [Mirage]
7ラウンド目
ファストのAセットを行い、防衛側にユーティリティを使い切らせ、その後時間をおいて再びAセットを行います。
組み立て式
フェイクを成功させるには、1ラウンドだけで完結させず、数ラウンドを費やして準備を組み立てる場合があります。
日本初の公認大会「RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL」で見事優勝した Jupiter によるAフェイクBを見てみましょう。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [ASCENT]
4ラウンド目
一般的なAショート攻め・A挟みファストです。
ハンターズヒューリーでAショート攻めをサポートしています。
9ラウンド目
エコでのAショート攻め・A挟み。
攻撃側は4ラウンド目以降、Aショート攻めを一切してなかったため、この9ラウンド目を使って相手にAショート攻めを想起させるのです。
そして、これらの4・9ラウンド目の戦術が10ラウンド目のフェイクに繋がります。
10ラウンド目
A挟みじゃなくてBです。
4ラウンド目と同様に、Aショートをハンターズヒューリーで威圧とクリアリングを行い、サイバーケージとリーアでAショート攻め・A挟みの準備を行います。
これまでのラウンドの組み立てから、相手にAショート攻めを印象付けさせているため、防衛側は一気にAへ配置転換しました。
そして防衛側の意識がAへ向いている間に、一気に Peeky Style のB攻めを行うのです。
まさしく王者に相応しい組み立て式フェイクだと言えるでしょう。
(この作戦について、もう少し深く掘り下げた内容は12章にて)
CSGO史上、おそらく最も有名な組み立て式フェイク
ELEAGUE Major 2017 SK Gaming vs. FaZe Clan [Mirage]
6ラウンド目
Aサイトに対して変則的なセットアップを仕掛け、見事勝利します。
12ラウンド目
6ラウンド目と同じセットアップを行い、タイミングを見計らってBサイトに設置しています。
このように、組み立て式はハマれば大きなリターンを得ることができるでしょうが、その分難易度は高いです。
CSGOにおける組み立て式のフェイクについて考察した記事
TSM式
【TSM式】はスタンダードと組み立て式フェイクの複合技です。
F字状のエリアの手前側に敢えてスモークを炊くことで、こちらの情報を隠しつつ、エリアを広く取ることができます。
VALORANT ではヘイブンのA、スプリットのAで頻繁に見られます。
GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020 Absolute JUPITER vs. Crazy Raccoon [HAVEN]
17ラウンド目
Aロングの入り口にサイバーケージが展開されたことで、防衛側は敵がショートまで入り込んだのかどうかを知る術はありません。
そして、防衛側が人員をAへ固めている間にC攻めを仕掛け、見事勝利します。
akioni氏(2017)はTSMのメリットについて以下のように分析しています。
最初に投げるスモークでCTは情報を得られなくなる。そうなると「幽霊」が生まれる。いるかもしれないし、いないかもしれない。CTはいるかどうかも分からない1人と戦うことになる。こんな感じでローリスクハイリターン*1
※筆者注釈:CT=防衛側のこと。
このように、攻撃側は物理的にAショートを確保していないものの、このケージ1つで実質的にAショートが取れてしまうのです。
これがTSM式の強みであり、スタンダードと組み立て式フェイクの複合技と表現される所以なのです。
(更に詳細なTSM式は12章にて)
30Bomb Summer Cup 2020 Team SoloMid vs. Sentinels [SPLIT]
4ラウンド目
防衛側ブリーチ、ブリムストーンのプッシュによって、初手Aクリアがバレてしまいます。
しかし、0:58〜0:50にAランプに対してサイファーのサイバーケージを展開し続けることでA攻めの可能性を示唆させ、ブリムストーンのみならずセージもA側に誘導させます。
そして、Bサイトにはジェットしか残っていないタイミングを見計らってB攻めを決行します。
9ラウンド目
1:32〜1:25にサイバーケージを起動させ、ジェットとブリーチが視認できない空白の時間帯を生み出し、初手Aランプ確保の可能性を示唆させます。
その後、B 側でキルが発生したため、防衛側セージはAからBへ配置転換を行うものの、攻撃側は時間をかけてホールドしたことによってA側へ切り返した可能性を生じさせます。
結果、防衛側セージがAへ帰ったタイミングを見計らってB攻めを行います。
もし初手にAフェイクを行なっていなければ、Aクリアという情報が防衛側に渡ってしまい、セージがAへ帰還することはなかったでしょう。
CSGOの例
ESL One Cologne 2015 Team SoloMid vs. EnVyUS [Cache]
22ラウンド目 cajunbに注目
TSM式のスタンダードを使うことで、1人でB側エリアを広く確保することができます。
CSGOにおけるTSMについて、EROC氏(2016)は「Bサイトへの圧力になるのと同時に陣地取りにおいても重要」*2と述べています。
TSMしない場合のエリア状況
TSMした場合
エリアを広く取れる上に、前目の防衛側を引かせることができます。
フェイク要素
JCG CS:GO Premier 2016 Summer RJ Absolute vs. DeToNator [Cache]
7ラウンド目
TSMじゃなくてBファストです。
TSM=マップコントロールという常識から、「TSMだからゆっくり攻めてくるだろう」という心理的メタの裏をかいたフェイクのファスト戦術です。
結果、防衛側はBファストを迎え撃てる準備ができていませんでした。
まとめ
このように、時折フェイクを織り交ぜることで敵の意表を突くことができ、よりラウンドを勝利に導くことができるようになるでしょう。
次 更なる意表をついたプレイ 秩序
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