【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第8章- 防衛側の情報取り
本連載記事は旧コンテンツです。
新バージョンを下記にて連載予定です。
これの続き
防衛側の考え方
さて、攻撃側のやりたいことや求められる戦術を一通り述べたところで、次はそれに対する防衛側の動きです。
しかし、防衛側は明確に「こうすべき」という指標がありません。
えびまよ氏(2019)は、守備について以下のように指摘しています。
守り側には勝ち筋というものがありません。なぜなら時間制限まで耐えきるか敵を全員殺すこと、(爆弾の解除)が勝利条件なので、敵を殺すこと以外は相手に勝利条件を委ねられています。こうしたら勝てるって状況が存在しません。*1
つまり、防衛側といえども受容的(敵がサイトに攻めてくるまでパッシブに待ち続けること)だと、いつまで経っても敵の本命が分からず、勝率が安定することは決してないでしょう。
そのため、防衛側も攻撃側と同じく、情報を取ったりマップコントロールを行い、敵の本命を確定させる必要があるのです。
この章ではその情報取りに繋がる配置を紹介したいと思います。
3種類の守り方
FalleN 氏(2016)によると、防衛側の配置は
- スタンダード
- マップコントロール
- リテイク
以上の3種類に分類される*2と述べています。
この3つの配置の目的を覚え、状況に応じて使い分けられるようになりましょう。
①スタンダード
【スタンダード】は、その名の通り基本的な配置です。
byrrice氏(2017)は、スタンダードの配置について以下のように定義しています。
In general, a 2-1-2 setup with 2 on A site, 1 in middle, and 2 on B site is the most common CT default on maps *3
クソ翻訳:最も一般的なスタンダードは、Aサイトに2人、ミッドに1人、Bサイトに2人の「2-1-2配置」です。
2-1-2配置を取ることで、どのマップでもサイトへ通じる道をそれぞれ抑えることができます。
アセントでは、例えばこのような配置です。
すべての経路を抑えることができています。
平均的な配置と言えるでしょう。
この配置で覚えておくべきことは、スタンダード配置は最終配置ではないということです。
なぜなら、どのサイト内にも1〜2人しかいないため、どこへ攻められても守り切ることはほぼ不可能だからです。
つまり平均的ゆえに器用貧乏なのです。
そこで、このスタンダード配置で得た情報を元に、次の配置へ移行するのです。
②マップコントロール配置
防衛側でもマップコントロールは行うべきです。
nggater氏(2016)は、防衛側におけるマップコントロールの優位性について以下のように説明しています。
In its basic form, map control allows a team to gain information about what the other team is doing, while also restricting the movement of the opposing team. As a CT, having control over contested areas eliminates the execution of certain strategies.(中略)This narrows the T's options, the more control: the more predictable their strategies get.(中略)to gain this information, CT’s must push aggressively into contested zones.*4
クソ翻訳:基本的な形式では、マップコントロールを行うと敵が何をしようとしているのか情報を得られるため、敵チームの動きを制限できます。防衛側は競合エリアを制御することで、攻撃側による特定の戦略を排除することができます。(中略)これによって攻撃側の選択肢を狭め、敵の戦略がより予想しやすくなります。(中略)この情報を得るために、防衛側は競合エリアを積極的に侵略する必要があります。
「特定の戦略を排除すること」とは具体的に、
- A側を完全に取ることで、Aに攻められる可能性を無くす
- ミッドを取ることで挟み戦術を抑制する。
- サイト内にスカイスモークを入れることのできるエリアを抑えることで、スモークを使うセットアップを抑制する。
などが挙げられます。
では、どういったエリア取りの手法があるか述べていきたいと思います。
積極的エリア確保
【積極的エリア確保】は防衛側に主導権があるマップコントロールの手法です。
少し情報を取りにピークし、敵がいないという情報を手に入れたならば、敵がいないエリアは前目で抑え続け(エリア確保)、他のエリアへ人数を集中させましょう。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL 野良連合 vs. Cyclops athlete gaming [HAVEN]
13ラウンド目
C側にダークカバーが2つ使われたものの、CにアクションがないためAの可能性が浮上します。
そこでA側のソーヴァがオウルドローンでAロングをクリアリングし、セージが物理的にAメインを詰めることでAを完全にクリアリングし、C確定させます。
積極的エリア確保で大切なのは、必ず詰めて情報を取ることです。
詰めずに得た情報を過信したため敗北した例
T1 x Nerd Street Gamers Showdown T1 vs. Team SoloMid [ASCENT]
4ラウンド目
リコンボルトでBメインを索敵したものの、敵影が見られなかったため、A2-ミッド1-B2配置からA4-B1配置へローテーションしましたが、実際はB攻めでした。
これはVALORANT特有の要素ですが、スパイカメラ・リコンボルト・オウルドローン・ブームボット・トレイルブレイザー等でクリアリングしたから敵は来ないは大きな間違いです。
上の例では、0:55〜0:52の段階ではBクリアというだけで、A確定ではないです。
あと50秒もあるなら、B攻めてA攻めてB攻めくらいできます。
これはCSGOの用語ですが、【FaZe の時間】という標語があります。
これは、攻撃側が最速でAからB、BからAへ寄る時間のことです。
とある試合で、攻撃側の FaZe Clan はAB共にエリアを広く確保し、残り20秒までAでアクションをかけて最終B攻めというフェイク満載の作戦を行います。
防衛側のBプレイヤー Stewie2k は、このほぼA確定の状況でもAアクションに惑わされなかった=FaZe の時間を理解していたおかげで、敵がBへ切り返してくる可能性も踏まえ、その結果、敵のB本命攻めを非常に有利な位置から向かえ撃つことができました。
(B挟みの可能性もあったので、この場所から離れられなかったというのが正しい解釈でしょうか)
ELEAGUE Major: Boston 2018 - FaZe vs. Cloud9 [Inferno]
30ラウンド目
ちなみにこの試合は、CSGO史上最も有名な試合の1つです。
このようにエリアを広く取れていないと、残り20秒=FaZe の時間までAにアクションがかかっていたとしても、敵の最終本命を確定させることは困難です。
敵の本命を確定させる際に大事なのは、瞬間的なクリアリングではなくエリア確保です。
CSGOの例
初手にB側を完全に制圧し、A2-B3配置からA4-B1配置へローテーションした例
BLAST Pro Series Bahrain 2019 Astralis vs. Liquid [Inferno]
8ラウンド目
以上の試合の防衛側エリア保持時間を統計に取り、エリア確保の重要性を説いた私の過去記事
Ascent で例えると、本当にBクリアだと言えるのは以下までエリアを取った状態でしょう。
ここまでB側が取れることなんて滅多にありませんが。
ちなみに、このように防衛側が情報取りのために裏取りの一歩手前までプッシュすることを【アグレッション(Aggression)】と呼びます。(詳細は9章)
しかし、物は使いようです。
もう攻撃側に残された時間が全くない状態、例えば FaZe の時間を過ぎた残り15秒などでオウルドローンを使って前目をクリアした場合は、完全にクリアと言っても構わないでしょう。
まとめ 敵の本命を確定させる手法
①エリア確保
②FaZe の時間を過ぎた後のクリアリング
消極的エリア確保
【消極的エリア確保】は攻撃側に主導権があるマップコントロールの手法です。
積極的エリア確保がゼロ(拮抗)からプラス(優勢)にする手法だとすれば、消極的エリア確保はマイナス(劣勢)をゼロ(拮抗)にする手法です。
特定のエリアに敵が多そうだと情報を手に入れたなら、早急に敵の少なそうなポジションを探してアグレッションを行いましょう。
その理由として、akioni氏(2017)は以下のように説明しています。
どこかが押されれば(場所を取られたら)、どこかが飛び出る(違う場所を取りに行く)。Tに場所を取られっぱなしだと守りに使ってる位置がバレてしまう。どの場所も取れてないと詰む。挟まれててヤバイなと思った頃にはもう詰んでる。だから取られたらすぐに取り返す。*5
※筆者注釈:T=攻撃側のこと
「挟まれててヤバイなと思った頃にはもう詰んでる」状況を具体的に言うと、1〜2人しか守っていないサイトに攻撃側が多方面から計5人で攻めている状態のことです。
アセントでの一例
「固まって動いてくる攻めに人数で勝てるわけがない」*6ため、このような挟まれた状況を回避するためにも、防衛側はサイト内に残るのではなく、能動的に詰めて挟まれる前にこちらから戦闘を仕掛けるのです!
つまり敵のAショート攻めの対策として、A守りの人はこのような動きが最適であると言えます。
Aショート攻めに対してAロングにアグレッションを仕掛け、勝利した例
Fiveness Japan Cup VALORANT 2020 SCARZ vs. Zooted [ASCENT]
1ラウンド目
https://youtu.be/Xi_3iWEEL_8?t=22121 (埋め込み不可)
セージとレイナは、ミッドにスカイスモークが使用されたことを視認したため、ミッド攻めを警戒してすぐにAサイトへローテーションします。
そして、AサイトのレイズとレイナはAショート攻めから逃れるため、Aサイトを捨ててAロングを取りにいきます。
CSGOの例
EMS One: Katowice 2014 Virtus.pro vs. Ninjas in Pyjamas [Mirage]
20ラウンド目
ミッドとA側にアクションがかかったので、B側を完全に制圧します。
結果、敵の本命はBで、非常に有利なポジションから迎え撃つことができました。
これを【交通事故】と呼びます。
複合
初手に積極的エリア確保を行なってエリアを取れた際、最終的に敵の本命攻めとかち合う場合があります。
その場合は消極的エリア確保のセオリーに則り、挟まれないよう立ち回りましょう。
T1 x Nerd Street Gamers Showdown FaZe vs. Immortals [BIND]
7ラウンド目 セージ
B挟みでしたがバリアオーブで窓部屋を死守できたため、挟まれることはありませんでした。
結果、攻撃側は窓部屋のプレイヤーに時間を稼がれてしまい、A側から寄ってきたプレイヤーと窓部屋で挟み撃ちにされました。
T1 x Nerd Street Gamers Showdown 100 Thieves vs. Immortals [BIND]
6ラウンド目
挟まれる前にロングを先にクリアリングし、窓から遅れて攻めてきた敵はロングとサイトから挟み撃ちしました。
余談
バインドはミッドと呼ばれる地点がないため、意図しない限りマップコントロールが起こることは絶対にないです。
しかし、エリアを確保しないと敵の本命がいつまで経っても特定することができず、最終的には挟まれて敗北することでしょう。
バインドの真の姿は、上の例のようにAシャワーやB窓で壮大な争奪戦が起こることだと私は予想しています。
例 まさにこういうこと
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Crazy Raccoon vs Sunsister Rapid [BIND]
13ラウンド目
このような試合がもっと見たいものです。
CSGOの例
ESL One New York 2019 Astralis vs. Liquid [Overpass]
12ラウンド目
4対5の人数劣勢状況でしたが、初手にB側の積極的エリア確保を完了させていたため、敵のB攻めに対して挟み返すことができました。
初手マップコントロール
エリア確保なんて慎ましい考えではなく、ガッツリ大きな戦闘を起こして人数を削り合う場合もあります。
顕著な例は、ミッドの攻防です。
第三者が見ると「どっちが攻撃側か分からない」と思うくらい、防衛側がガンガン攻めることが多いです。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Lag Gaming vs. Jupiter [ASCENT]
21ラウンド目
ミッドを完全に掌握しました。
Kaestu CUP 野良連合 vs. AKIHABARA ENCOUNT 神威 [HAVEN]
14ラウンド目
Cを捨てて、AとBから全員でアグレッションを仕掛けています。
CSGOの例
ESL Pro League Season 9 MIBR vs. mousesports [Inferno]
9ラウンド目
防衛側がB側とセンターを完全に掌握したため、攻撃側はマップ端の狭い経路からしか攻めることができませんでした。
このように、初手マップコントロール配置はエリアが広く取れるといった大きなメリットがありますが、エリアを取ることに人数を費やしてしまうため、肝心のサイト内に多くの人員を割くことはできません。
しかし、エリア確保を終えた後にリテイク配置を取ることができれば、リスクを大幅に減らすことができるでしょう。
次 リテイク配置
この記事は、Riot Gamesが公式承認するものではなく、Riot Games又はVALORANTの製作・管理に正式に関与したいかなる者の見解・意見に基づくものではありません。VALORANT及びRiot Gamesは、Riot Games, Inc.の商標又は登録商標です。VALORANT ©︎ Riot Games, Inc.
*1:https://ebimayox.hatenablog.com/entry/2019/06/17/191927
*2:https://youtu.be/_xBINrPhAkA?t=75
*3:http://team-dignitas.net/articles/blogs/Unknown/11844/defaults-in-csgo-an-explanation
*4:http://team-dignitas.net/articles/blogs/CSGO/8866/map-control-what-is-it-and-how-to-take-advantage-of-it
*5:https://akioni.wordpress.com/2017/10/28/csgo-%E5%82%99%E5%BF%98%E9%8C%B2/
*6:えびまよ氏、2017、https://ebimayox.hatenablog.com/entry/2019/06/17/191927