【VALORANT】CSGOの競技シーン出身者に勝つためには -第2章- 攻撃側の戦略と設置場所
本連載記事は旧コンテンツです。
新バージョンを下記にて連載予定です。
これの続き
攻撃側
戦術・戦略とは
まずは、ごく基本的な話。
爆破FPSにおける戦術・戦略とは何か。
突然ですが質問です。
例えば、赤側と青側が以下のように会敵した場合、勝つのはどちらでしょうか?
(三角形は視点の向きを表している)
正解は青側。
なぜなら、敵の視界外から先に撃ち合いを始めることができるからです。簡単ですね。
この状況は、軍事用語で【包囲(Envelopment)】【伏撃(Ambush)】、FPS用語で【裏取り】【フランク(Flank)】*1などと呼ばれます。
青側からすれば、これほど楽にキルが取れるシチュエーションは他にないですよね。
逆に赤側はこんな状況ぴえんぴえんです。
実は、爆破FPSの競技シーンにおいて、上記の裏取り状況は意図的に作り出すことができるのです。
その行為を【戦術(Tactics)】【ミクロ(Micro)】などと呼びます。戦略ではありません。
この戦術が試合で使用された例
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL LAG Gaming vs Reject [Bind]
5ラウンド目 防衛側サイファーがキルされてからの防衛側オーメンの動き
防衛側オーメンは、アビリティを巧みに使ってラウンド序盤からワープゾーンの中に潜み込み、攻撃側の裏を取ることができました。
この防衛側サイファーのように、敵から注目を一斉に浴びることを【釣り】と呼び、防衛側オーメンのように、敵から注目されない位置から戦闘に参加することを【カバー】と言います。
また、味方のデスを利用して敵の位置を特定し、カバーによってキルを獲得することを【トレード】*2と呼びます。
カバーによってラウンドを劇的に勝利した例
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL BAKEMON vs 野良連合 [ASCENT]
2ラウンド目 防衛側ブリムストーンの動き
90度に張り付いているセージが【釣り】として敵の注目を集め、その隙に注目を浴びない位置からブリムストーンが撃ち合いに参加し、セージを助けています。
この技術の詳細は、えびまよ氏による、おそらく日本一丁寧に説明されている記事をご覧ください。
では、例えば上記の戦術を互いが以下のように繰り返した場合、最終的に勝つのはどのプレイヤーでしょうか?
(これは非常に極端な例で、実際の戦場はここまでシンプルではないですが)
正解は青3です。誰からも狙われていないからです。
もし、ラウンド終盤で青3と赤3による1対1になった場合、青3が赤3の背面を取ることができる作戦があったとすれば、それは勝ち確定と言っても過言ではないでしょう。
このように「青3が最終的に生き残り、ラウンドを勝利する」というラウンド通しての大きなプランや勝ち確定の状況まで作り出すことを【戦略(Strategy)】【マクロ(Macro)】などと呼びます。
この状況を体現したラウンド例
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Crazy Raccoon vs. Sunsister Rapid [Bind]
5ラウンド目
4対4でのA設置シチュエーション。
最終的に、HP1のほぼ無力な攻撃側ブリムストーンが横を向いていた防衛側レイナを仕留めました。
この例のように、爆破FPSではいかにして敵にまともに撃ち合いをさせない状況を作り出すのかが重要なのです。
勝利条件から逆算する戦略
藤田氏(2020)は爆破FPSにおける撃ち合いについて以下のように分析しています。
このゲームにおける1対1の撃ち合いは、「待つ」ほうが強い。(中略)エイムを「置いている」ところに入ってくる敵を撃つほうが、どこにいるのかわからない敵に照準を合わせて撃つよりも、よっぽど簡単であることだ。*3
このように、爆破FPSでは基本的に待ち有利・攻め不利です。
つまり、攻撃側が「防衛側を全滅させる」という勝利条件*4を安定して達成するためには、「待つ」状況を多く作ることが大切だと言えます。
加えて、藤田氏(2020)はこうも述べています。
Aを確保した攻撃側は、「スパイク」を設置し、Aを「守り」はじめる。守備側は攻撃側に守られているAまで移動し、攻め落とさなければならない。しかし、先述したとおり、この作品のメカニクスにおいては、「待ち」を行っている側のほうが強い。趨勢は一気に、設置したスパイクを「守っている」攻撃側に傾く。*5
つまり、スパイクを設置した瞬間から実質的な攻守陣営が逆転し、「待ち」の状況が発生するのです。
まとめると、攻撃側の戦略において最も勝利に近い完成形は、スパイクを囲い込んで「待ち」の状況を作っている状態だと言えるでしょう。
上述の例を再喝
防衛側が攻め込んでくると考え得るポジションを、攻撃側は全て「待ち」の状態で監視しています。
また、攻撃側がどれほど人数差不利だろうが、スパイクを設置してしまうと、防衛側はスパイクを解除しに行かなければなりません。
スパイクを設置して「待ち」や【伏撃】の状況を幾度も作り、圧倒的人数差の絶望的シチュエーションで勝利した例
Mildom Masters Reject vs. Connect Gaming [Ascent]
16ラウンド目 Dep
CSGOの例
ICE Challenge 2020 mousesports vs. Natus Vincere [Train]
6ラウンド目 chrisJ
DreamHack Open Bucharest 2016 Virtus.Pro vs. Dignitas [Overpass]
29ラウンド目 NEO
当然ですが、敵を全滅させなくても(爆破でも)勝利なのも覚えておきましょう。
VALORANT JCG TOURNAMENT #4 ConnectGaming NEGEST vs. Le Lien [Bind]
9ラウンド目
2対4の大逆境シチュエーションでしたが、VALORANT特有の要素であるオービタルストライクとインセンディアリーでスパイク解除を妨害し、見事勝利しました。
これらのように、人数差はあれどもスパイクを設置することで勝利条件*6を満たす状況が生まれるのです。
ではここからは、チーム全体でどのようにこの状況を生み出すのか、まずは設置場所から紐解いていきましょう。
設置場所
実は、様々な角度から包囲して守ることのできるスパイクの設置場所は限られています。
先に、勝利に結びつきにくい設置場所について伝えておきましょう。
中設置
サイト内には必ず何かしらオブジェクトがあり、防衛側からの斜線を切って安全に設置できる場所があります。
この設置を【中設置】【安全設置】などと呼びます。
例
バインドのBサイト*7
バインドのBサイトにはトンネル状のオブジェクト(コンテナ)があるため、この中で安全に設置することができます。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL JUPITER vs. 野良連合 [Split]
5ラウンド目
スピリットのAサイトでは、看板裏やタワー状オブジェクトの壁張り付きで安全に設置することができますが、このようにサイト外からは監視することはできないです。
VALORANT 特有の要素として、バリアオーブを壁として利用し、安全に設置する戦術も多々見られます。
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL JUPITER vs. AVALON Gaming [Bind]
1ラウンド目
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Crazy Raccoon vs. Sunsister Rapid [Bind]
13ラウンド目
しかし、これらの結果を見ても分かるように、バリアオーブを張って無理やり設置したところで、どれも設置場所を監視できる状況ではないため、設置後の戦闘で勝利することは困難です。
CSGOにおける中設置の例
BLAST Pro Series: Global Final 2019 Liquid vs. Astralis [Inferno]
8ラウンド目
攻撃側はサイトを完全に取れなかったため、中設置を余儀なくされます。
結果、最終的な1対1で撃ち合いができることなく敗北しました。
このように、中設置は安全に設置できるといったメリットがありますが、それ自体が勝利に大きく繋がるわけではないのです。
えびまよ氏(2019)は、「中設置ってのは仕方なくするもの」*8と定義しており、攻撃側は「設置した後の1on1で圧倒的有利になれる設置」*9である【勝ち確設置】を最終目標にすべきと主張しています。
勝ち確設置
「勝ち確設置」「最強設置」「オープン設置」「開放設置」などと呼ばれるこの設置は、その名の通り設置場所がオープン・開放的で、様々な角度からスパイクを監視することができます。
ゆえに、設置した時点で勝ち確定・最強なのです。
爆破FPS初心者は、まずこの設置を覚えて、この設置ができる形を目指すようにしましょう!
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL Crazy Raccoon vs. Sunsister Rapid [Bind]
11ラウンド目
トラックの南側に設置すれば、ショート・小部屋・シャワーなどから監視することができます。
また、ショートからブリムストーンのインセンディアリーでスパイク周辺を燃やして、更なる時間稼ぎをすることができます。
一例
RAGE VALORANT JAPAN INVITATIONAL BAKEMON vs. 野良連合 [Split]
17ラウンド目
19ラウンド目
サイトの低い塔?の前に設置すると、ショートや窓など多数のアングルから監視することができます。
CSGOにおける勝ち確設置の例
ESL One Cologne 2018 Astralis vs. G2 [Dust2]
32ラウンド目
CSGOにおいて、最も有名なオープン設置の1つです。
『Alliance of Valiant Arms』のプレイヤーであるMother氏(2014)は、設置後の立ち回りについて以下のように指摘しています。
「敵の位置を確認する」こと,「戦闘をしない」こと,「C4解除のジャマをする」ことの3つが重要なポイント(中略)あくまでラウンドを取ることが目標なので,必ずしも撃ち合いに勝利する必要はない*10
※筆者注釈:C4=スパイクのこと
また、『Tom Clancy's Rainbow Six Siege』のプレイヤーであるPekotaro氏(2020)は以下のように表現しています。
ディフューザーの設置が成立した場合、シージ初心者は無理に敵を倒しに行くのではなく、ディフューザーを解除されないように守る立ち回りを意識しましょう。ディフューザーを設置した時点で攻撃側がかなり有利であるため、ディフューザーを守り切ることを最優先にしてください。*11
※筆者注釈:ディフューザー=スパイクのこと
このように、オブジェクトを利用した勝利条件が達成される場合は、わざわざ殲滅勝利を狙う必要性がないことを主張しています。
しかし、これは攻撃側有利の勝ち確設置をした状況での話であり、仕方なく中設置をした場合は、必ずどこかのタイミングで不利な撃ち合いを仕掛ける必要があるので留意しておきましょう。
では次は、勝ち確設置はどのような状況でできるのか否か、その具体的状況と手法を見ていきましょう。
次
この記事は、Riot Gamesが公式承認するものではなく、Riot Games又はVALORANTの製作・管理に正式に関与したいかなる者の見解・意見に基づくものではありません。VALORANT及びRiot Gamesは、Riot Games, Inc.の商標又は登録商標です。VALORANT ©︎ Riot Games, Inc.
*1:https://www.vpesports.com/csgo/fundamentals-concepts-to-understand-team-counter-strike/
*2:https://www.vpesports.com/csgo/fundamentals-concepts-to-understand-team-counter-strike/
*3:https://jp.ign.com/riot-games-tactical-fps/44594/feature/valorantfps
*4:https://www.famitsu.com/news/202005/05197967.html
*5:https://jp.ign.com/riot-games-tactical-fps/44594/feature/valorantfps
*6:https://www.famitsu.com/news/202005/05197967.html
*7:https://youtu.be/BOxVw5NzcdY?t=115
*8:https://ebimayox.hatenablog.com/entry/2019/06/26/040656
*9:https://ebimayox.hatenablog.com/entry/2019/06/17/191927
*10:https://www.4gamer.net/games/035/G003520/20140217012/
*11:https://pekotaro06.hatenablog.com/entry/r6s/offense-beginner